晴。
『橋川文三セレクション』読了。中島岳志編。その文体の無味乾燥さから、自分は多くの政治思想史が苦手だが、橋川文三は読める。硬い文章の底に、生きた血の通いがあるからだ。そして、橋川は、文学の読みも鋭い。実際、本書の「三島由紀夫伝」には、鮮烈な印象を与えられた。三島をイデオロギー的に、単純に肯定あるいは否定するのではなく、その教養と文体を、繊細な手つきで解きほぐしている。政治思想にせよ、その記述の柔軟さが失われることがない。著者の論は、「論のための論」ではないのだ。イデオロギーを、イデオロギー的でなく論じる。つまり著者は、実感というものを、決して手放さないように見える。そしてその、精神の「豊かさ」。なんとも、比較してはいけないかも知れないが、こうなると、編者の解説の貧しさがどうしても浮かび上がらざるを得ない。
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