フェルナンド・ペソア『新編 不穏の書、断章』/薄田泣菫『艸木虫魚』

曇。
フェルナンド・ペソア『新編 不穏の書、断章』読了。ほお、まだこういう書き方があったか。著者は、倦怠の中で、表現者を断念したかに見せかける表現者だ。文学はやりつくされたように見えても、新しい道があるものだな。しかし、頭の良い人が七面倒な読解をやってみせたくなるような本だ。自分には、本書は矛盾の塊に見えるので、何か言うことが躊躇われる。そうでないと、訳者や解説者のように恥ずかしい文章を書く羽目に陥るだろう。傲慢御免。

新編 不穏の書、断章 (平凡社ライブラリー)

新編 不穏の書、断章 (平凡社ライブラリー)

うーん、いかんなあ。最近ネガティヴだ。もっとポジティヴにいかないと。
有頂天になっているときが、危ういものだ。高い所でしくじるほど、あとが危険なことはない。
薄田泣菫『艸木虫魚』読了。日本というものを強く感じるエッセイ集。しかし、岩波文庫の表紙の内容紹介は上手いものが多いが、本書の「枯淡と洒脱の円熟味ゆたかなエッセイの数々は、どこかなつかしくまたさわやかな読後感を呼ぶ」とあるのは、間違ってはいないがよろしくない。そんな油の抜けきった文章ではないのだ。むしろ、大袈裟に云えば、生臭いくらいである。さすがに解説の杉本秀太郎氏は、(『茶話』についてだが)「毒薬と解毒剤、匕首と手術刀、火薬と媚薬、殴打と按摩、嘲笑と微笑、地獄と天国が、いつも皮膜をへだててとなり合い、渡り合っている剣呑極まりない短文である」と、そこいらの機微を摘出してみせる。闕語法に気をつけて読むべき本であろう。
艸木虫魚 (岩波文庫)

艸木虫魚 (岩波文庫)