晴。
近藤宣昭『冬眠の謎を解く』読了。著者の、冬眠研究の幾度とないブレイクスルーを記した本である。優秀な研究者の考える仕方というのが、よくわかる。まず、闇雲に実験していない。前もってよく考え、どのような結果になっても確実なことが云える実験をしている。だから、当初の予想と違っても、徹底的にロジカルに詰めていくのを通して、確かな事実を掴むことになる。例えば、冬眠に関係が深いHP複合体の発見は、血液中の濃度の減少という、予想と正反対の結果を示したのだが、考え抜くことにより、脳内中での濃度増加という、決定的な結果を得たのだった。
このように本書は、優秀な科学者の方法を垣間見るという面白さがあるのだが、もちろん、それで判明した結果も興味深いものが多い。例えば、哺乳類の冬眠は、体温の低下とは本質的には関係がないとか、冬眠は体を若返らせ、長寿と関係してくるなど。人間の寿命の永さも、人間は既に冬眠に類する作用を行なっている可能性があるためらしいなど、誰もが気になるようなことも書いてある。新書らしい、いい本だと思う。
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