スピノザ『エティカ』/澁澤龍彦『毒薬の手帖』

晴。暑い。もう冷房を入れている。
県営プール。

スピノザ『エティカ』読了。既に岩波文庫版で読んでいたが、中公クラシックス版で読み返してみた。よくスピノザの汎神論が云われるけれど、スピノザの言いたかったのは汎神論ではないような気がする。もっと人間の機微に注目しているというか、人間の有り様が問題になっているようだ。定理‐証明というスタイルは、却ってそれを隠蔽するところもある。まあ、凡庸な感想ですが。

エティカ (中公クラシックス)

エティカ (中公クラシックス)

澁澤龍彦『毒薬の手帖』を読み返す。種村季弘は、澁澤の文体を受け継ぐ者が出てくることが必要だと言った。これがなかなかむずかしいのだ。
音楽を聴く。■シェーンベルク組曲op.29、室内オーケストラのための三つの小品、オーケストラのための五つの小品op.16(ブーレーズ)。(PM23:35)

ギレリスのベートーヴェン・ソナタ集落手

ギレリスが弾く、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ集落手。まずいわゆる「選帝侯ソナタ変ホ長調WoO.47-1と、同ヘ短調WoO.47-2を聴いてみる。「選帝侯ソナタ」はベートーヴェン十三歳の時の作曲で、既に後年を予想せしむる閃きがところどころに聴かれる。この二曲では、特にヘ短調の作品が出来がいい。ピアニストのせいもあるだろうが、既に相当に聴かせる。作品番号付きのソナタには及ばないかも知れないが、他のピアニストももっと演奏したらいいのに。
 第二十六番「告別」は、これは技術的というより解釈のむずかしい曲だと思うが、繊細さとダイナミズムが同居した演奏になっている。なるほど、さすがだという感じ。第八番「悲愴」と第十四番「月光」も、夾雑物が洗い流された、新鮮な演奏。それにしても、ベートーヴェンソナタは何とも面白くって仕方がない。ギレリスはそれを実感させる。
 作品一〇の三曲。ソナタ第五番は、いくら何でもテンポが遅すぎる。この演奏に限っては、衰えを感じずにはいない。第六番は好きな曲で、溌溂とした演奏。ほぼ理想的ではないか。第七番も同様。

Beethoven Sonatas

Beethoven Sonatas