町田康『人間小唄』

晴。
音楽を聴く。■ブラームスクラリネットソナタ第一番op.120-1、第二番op.120-2(フローラント・エオー、パトリック・ジグマノフスキー、参照)。まあ不満はない。■バッハ:パルティータ第五番、第四番(ワイセンベルク参照)。ワイセンベルクがちょっとわかってきた。

町田康人間小唄』読了。僕は町田康をすべて読んでいるには程遠いが、さすがの天才も最近ちょっとマンネリ気味なのは否めないように感じていた。それはそれで伝統芸能的ではあったのだが。しかし本書では、即興感を前面に出し、破綻を積極的に引き受けて小説を書いている。これは自分だけかも知れないが、この小説では今ひとつ笑えない。とにかく刹那的な思いつきを全面的に肯定しているという印象だ。いつものバカバカしさがさらに過激になり、破綻を縫合するためにSF的な設定を余儀なくされているくらいである。本書でいたぶられている小説家の、最後の文章は支離滅裂への挑戦だ。恐らく本書は失敗作の部類に入るだろうが、読む価値はあるだろう。ところで、文庫解説の都甲幸治は、町田康的に実直に書いていて不気味である。もちろん意図的にやっているのであろう。大したものである。

人間小唄 (講談社文庫)

人間小唄 (講談社文庫)