平野啓一郎『顔のない裸体たち』/町田康『猫とあほんだら』

晴。
音楽を聴く。■モーツァルト:弦楽五重奏曲第四番K.516(オルランドQ、今井信子参照)。好演。■ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第四番op.23(メニューイン、ケンプ、参照)。本来はもっと鋭角的な曲だろうが、それでも聴かせてしまうところはある。

つけ麺「丸和」にて昼食。嘉六つけ麺750円。美味いね。
カルコス。
平野啓一郎『顔のない裸体たち』読了。題材としては、陳腐と云ってもよいような小説である。出会い系サイトで知り合ったどこにでもいるようなカップルが、露出的なセックスをする。男は女を「性欲処理女」とし、女もまたそれを拒まない。いつしか男は性行為をデジカメやヴィデオに記録するようになり、それらをネットの投稿サイトにアップロードする。その果てに、それはちょっとした傷害事件を引き起こし、関係は世間に知られてしまうことになる――こう書くと、じつに陳腐と云う他ない。本書で面白いのは、如何にも「現代を描いた」ようなコンセプトではなく(もしかしたら作者の意図はそこにあったのかも知れないが)、作者の執拗な、日本の小説にはめずらしいほどの、徹底した心理解剖である。それはともすると小説の感興を殺いでしまうほどのものであるが、それがなければ本書の取り柄は殆どないであろう。その意味での本書の退屈さは、価値があるものである。作者には、理屈っぽい小説をもっと書き続けてもらいたい。

顔のない裸体たち (新潮文庫)

顔のない裸体たち (新潮文庫)

町田康『猫とあほんだら』読了。シリーズ第三弾。このシリーズは、町田康の本の中ではもっともノン・フィクション的だろうな。ちゃんと奥さんがでてくるし。本書も、これまでどおり猫をめぐる騒動を面白おかしく書いている。ホント、事実らしいのだが超オモロイのだよなあ。笑ってしまう。しかし、母猫シャアが天寿を全うするところは、じつに悲しかった。読んでいて泣けてきたくらい。こういう文章も書けるところが、町田康の天才たる所以だな。早く続編が読みたい。なお、著者自身による表紙の写真は so cute。
猫とあほんだら (講談社文庫)

猫とあほんだら (講談社文庫)