山崎正一&串田孫一『悪魔と裏切者』

雨。
音楽を聴く。■モーツァルト交響曲第二十一番K.134(ベーム参照)。■ショスタコーヴィチ弦楽四重奏曲第十二番op.133(エマーソンSQ、参照)。■ブラームスハイドンの主題による変奏曲(二台のピアノのための)op.56b(アルゲリッチ、ポリーナ・レスチェンコ、参照)。さすがの演奏。アルゲリッチに引きずられて、レヴェルが高くなっている。二台のピアノ版は初めて聴いたが、オーケストラ版と全然ちがうではないか。■ベリオ:管弦楽トランスクリプション集(パーセル、バッハ、ボッケリーニ、モーツァルト)(シャイー、参照)。まるでウェーベルンのような、モーツァルトの編曲がおもしろい。原曲がまったくわからないのだが。あとはつまらない。
■ベリオ:管弦楽トランスクリプション集(シューベルトブラームス)(シャイー、参照)。ブラームスのはクラリネットソナタ第一番の編曲で、クラリネットのパートはほぼすべて同じだと思う。ピアノ伴奏部分をオーケストレーションしていて、かなり自由にやっている。結構おもしろかったが、ちょっとくどくて段々ウンザリしてきた。やはり原曲は名曲だと再認識。

県営プール。
山崎正一串田孫一『悪魔と裏切者』読了。「悪魔」とはルソー、「裏切者」とはヒュームを指す。この二人が繰り広げた大喧嘩は、当時スキャンダルになったし、現在においても有名である。本書は二人の交わした書簡を中心に、その大喧嘩の全体が見えるよう、工夫されたものだ。編訳者のひとりである山崎正一氏は、「この顛末を書いているうちに、段々ルソーに同情するようになってきている自分を発見して、筆者は驚いている」と述べており、文庫解説者の重田園江氏も同様であるようだが、普通に読めば、誰でもルソーの「狂気」ぶりに直面することになった、ヒュームに同情するのではあるまいか。いかにその後のヒュームの行動が「君子」らしくなくても、哲学者に凡人並みの側面があったところで、別に当り前の話だと思うのだが。もっとも、この騒動からそれぞれの思想の面に降りて行くことは充分可能だし、編者たちの意図もそこであろう。さても、或る見方からすれば、ルソーは「狂気の天才」であり、ヒュームは「(超)秀才の普通人」であると見ることもできよう。まあ、自分にはよくわからない話である。本書はおもしろかったが、週刊誌のゴシップ記事を読むようなおもしろさであったような気がする。過剰な読みは必要であるのだろうか。