山室恭子『中世のなかに生まれた近世』/古井由吉『木犀の日』

日曜日。雨のち曇。
カルコス。昼過ぎ、父を送ってゆく。
山室恭子『中世のなかに生まれた近世』を開いたのだが、自分だけかもしれないけれど、退屈で読み通せなかった。内容は、戦国大名たちの文書の分析で、印判状を使っているのか、判物で出しているのか、そこのところを年を追って調べている。確かにそれでわかることはあるのだが、どうも素人には専門的すぎるし、あまりにも単調で繰り返しが多いようにも思われた。まあ、読む人が違えば読めるのかも知れないが。

古井由吉『木犀の日』読了。自選短篇集。第一印象は、とにかく冥い(って凡庸ですね)。陰々滅々。平凡なセックスと家族。そして、登場人物がよく狂う。それらの狂気には共通性がありそうだが、不透明である。実際に対応するような病気は何だろう。幻想小説のような作品も多く、夢の中にいるような印象を受ける。老いと死。しかし、射程は遥か遠くまである。古井の小説は、こちらの認識自体を変えそうなくらい深い。特に若い人に薦める。古井由吉の射程は、まだ窮め尽くされていないのだ。
木犀の日 (講談社文芸文庫)

木犀の日 (講談社文芸文庫)


音楽を聴く。■マーラー交響曲第五番(シャイー)。バランスのとれた、かなりいい演奏だ。ついにマーラーを自然体で演奏できる世代に入ったのだなと思う。コンセルトヘボウが手兵なのも大きい。聴いていて心地よい演奏。■ブラームス:ピアノ協奏曲第一番op.15(ギレリス、ヨッフム)。ギレリスのブラームスが悪かろう筈がないと思って聴いてみたら、やはりよかった。抒情的なところは抒情的に、力強く演奏すべきところは力強い、ドイツ音楽の正統的な演奏だ。また、ギレリスのピアノは、いつも通り音色が美しい。明晰さと迫力を併せもったピアノである。
マーラー:交響曲第5番

マーラー:交響曲第5番

ブラームス:ピアノ協奏曲第1&2番、他

ブラームス:ピアノ協奏曲第1&2番、他


夜半過ぎ、台風接近。雨脚が強くなってきた。