クロポトキン『ある革命家の思い出(上)』『同(下)』

雨。
P・クロポトキン『ある革命家の思い出(上)』読了。高杉一郎訳。自分は恥ずかしながらクロポトキンについて殆ど無知だが、これは面白い。上巻は彼の生い立ちから始まり、軍人を辞めるまでの話で、とりわけ彼が若い武官として、シベリアで生き生きと仕事をしている記述には、まったく惹き込まれる。彼は明らかに有能で、シベリア経営に携わったり、地理学上の発見をする地理学者として、未踏地を探検したりするのだ。しかし、彼がどれほどシベリア経営を改善しようと仕事をしても、ロシアの分厚く度し難い官僚組織にぶつかると、積極的なことはすべてサボタージュされてしまう。それがつくづく身に沁み、結局彼は軍を退官するのだった。

ある革命家の思い出 上(全2巻) (平凡社ライブラリー)

ある革命家の思い出 上(全2巻) (平凡社ライブラリー)

P・クロポトキン『同(下)』も読了。いやあ、素晴らしくも面白く、感動的だ。こういう読み方は間違っているのかも知れないのだが、ほとんど文学的な感興を覚えた。波乱万丈の、冒険小説、という感じである。とりわけ、読者は誰でもそうだと思うのだが、脱獄の場面のハラハラすることと言ったらない。革命家としてのクロポトキンについては、自分には語る能力がないのだけれども、彼はイデオロギーから革命家になったのではなく、生い立ちと天分と体験によって、一歩一歩アナーキストになっていったということは、本書からよくわかった。それだけに、叩き上げの強さがあり、信念はゆらぐことがない。印象的なのは、彼の人格的な魅力で、また笑いの精神があるところだ。そして、彼はまた科学者(地理学者)でもあったのだ。様々な面をもつ彼は、どんな困難にも、絶望するということがなかった。まったく稀有な人物だったのだなと、思わざるを得ない。
okazさんのところで発見。小さい子(Lil Domon君)がすごいよ!


今の子供たちの心の中で何が起きているのか、正確に知らねばならない。極めて難しいことだが。何とも怖ろしいことになってきている。もう、我々の世代の子育てが失敗したなどと云っても、仕方のない段階に入ってしまったようだ。責任者探しをするより、現状の精確な把握が必要になっている。