ウラジーミル・アルセーニエフ『デルスー・ウザーラ(上)』

晴。
音楽を聴く。■バッハ:パルティータ第五番(ヒューイット、参照)。これはいい。■ウェーバー:ピアノ・ソナタ第二番op.39(エンドレス、参照)。多少ウェーバーがわかってきた。まあこれを聴く限り、二流の作曲家ですらないな。

ウラジーミル・アルセーニエフ『デルスー・ウザーラ(上)』読了。かつて、最後のインディアンと呼ばれた「イシ」についてのノンフィクションを読んだことが思い出された。本書は舞台がシベリアになっていて、語り手はロシア人の、その地方の探検家であり、彼と、森の中で原始的な狩猟生活をしている「デルスー・ウザーラ」との交流を描いた小説という、そんな体裁になっている。どうしたわけだか、語り手とデルスーの間には魂の結びつきが得られ、厳しい自然の中で、デルスーの知恵にも助けられて、二人は生死を共にするような体験もする。語り手が魅せられるように、デルスーは素朴だがもののよくわかった人物であり、森の中のことは、語り手が(読者も)一々驚かされるほど何でも詳しい。まあ未開人と云ってしまえばそうなのだが、高潔であり、我々には決して真似のできない自由人でもある。語り手もそのことがはっきりわかるだけの人物であり、それだからこそデルスーも好意を寄せたのであろう。
 本書の訳者は小説家の長谷川四郎であり、彼が満鉄にいるころに本書に出会い、憑かれたように翻訳してしまったというもので、訳者の会心作であるようだ。まるで元から日本語で書かれた本のように読める。それから、小説ではあるが、ノンフィクションに見紛うくらい、シベリアのことは魅力的に書かれている。語り手はほぼ著者自身と言っていいのだろう。以下下巻。

デルスー・ウザーラ〈上〉 (河出文庫)

デルスー・ウザーラ〈上〉 (河出文庫)


県図書館。
明日から(人並みに)ハードな一箇月間。あまり読めなくなるかも知れないなあ。できるだけ読みたいものです。