荻原魚雷『本と怠け者』

晴。また暑いではないか。
荻原魚雷『本と怠け者』読了。これはいい本だ。著者は時流などにはまったく乗っていないけれども、時代から切り離されているわけではない。むしろ、皆うすうす気づいていながら考えまいとしていること、いわば時代の無意識について、訥訥と地味ながら、粘り強く考えている人だと思う。そしてその射程は、相当に長いものだ。著者のブログはいつも愛読しているが、一冊の本を読むというのはまた違った感覚で、著者の文章の射程も、こうして初めて判ったわけである。この本、売れるといいな。

本と怠け者 (ちくま文庫)

本と怠け者 (ちくま文庫)

柄谷行人はこんなことをやっていたのだな…
http://www.youtube.com/watch?v=ylWQlrHQ4Gk&feature=youtu.be


グールドの弾く、バッハのピアノ協奏曲第一番第一楽章。冒頭が少し切れている。グールドは相当若い。正規録音のバーンスタインとの共演よりは明らかに前で、おそらくレコード・デビュー以前だろうというのは、まだかなりロマンティックな演奏で、さほどザハリッヒなそれでないからだ。音質が悪いのは残念だが、これはこれでとてもいい演奏だ。もしグールドが、その後もバッハをこういう風に弾いていたら、これもまた面白かっただろうに。自分はこの楽章がとても好きで、これだけよく聴くのだが、この演奏はじつに素晴らしくて、思わず聞き入ってしまった。