荒井信一『コロニアリズムと文化財』/吉行淳之介、開高健『街に顔があった頃』

晴。
荒井信一『コロニアリズム文化財』読了。題からは明瞭でないが、韓国併合以降、日本人が官民共に、朝鮮(半島全体をこう呼んでおく)から文化財を大量に略奪してきた歴史を記述する。根こそぎ略奪したという印象で、弁解の余地はない。官民共にひどいが、特に民間人が数千基にも及ぶ古墳を破壊し、埋葬品を美術品として盗掘して内地の骨董マーケットに流してきたのは醜悪である。恐らくこれらは現在でも流通し、事実の把握はほとんど不可能になっているのではないか。
 本書の記述は淡々と事実を述べていくという学術的スタイルで、基本的に資料を明記し、実証的になされている。新書であるから、一般人でも読めるような記述になっているのも、一般向けとして価値があるだろう。とりあえず、本書くらいのことは抑えておくべきかと思った。日本には、このように美術品が略奪されたという歴史はなく(というか、自分は知らない)、かかる問題に鈍感になりがちであるが、まさしく朝鮮の文化と国の誇りに関することであり、イギリスによるエルギン・マーブルの略奪が醜悪であるなら、自分たちも同様のことをやってきている事実は知っておくべきだろう。これは「自虐史観」でも何でもないことである。

コロニアリズムと文化財――近代日本と朝鮮から考える (岩波新書)

コロニアリズムと文化財――近代日本と朝鮮から考える (岩波新書)

吉行淳之介開高健の対談集『街に顔があった頃 浅草・銀座・新宿』読了。笑える。顰め面らしい題名だが、それぞれの街を枕にした、徹底したワイ談のオンパレード。しかも、露骨になるギリギリで止め、笑いで昇華しているところがさすがだ。二人とも大人だなあ。知性も感性も経験もある。自分も年はもうオジサンなのだが、まだまだ。
街に顔があった頃―浅草・銀座・新宿 (新潮文庫)

街に顔があった頃―浅草・銀座・新宿 (新潮文庫)


明日から三日間、家族で東北を観光してくる予定。今回は天気はどうかなあ…