森永卓郎『なぜ日本だけが成長できないのか』

日曜日。曇。
昨晩は明け方まで AOJ をやっていた。なのでちょっと眠い。

NML で音楽を聴く。■バッハの無伴奏バイオリンのためのパルティータ第一番 BWV1002 で、ヴァイオリンはヤッコ・クーシスト(NMLCD)。よい。音が美しいな。■モーツァルト交響曲第三十三番 K.319 で、指揮はジョージ・セルロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団NMLCD)。速い速い。しかしセルってあまりよいことを言われないように思うが、僕はもしかしたら好きなのではないかなあ。自分に合っている気がする。

雨。
カルコス。新書新刊二冊購入。しかし、これだけで 2000円かあ。もう気軽に新書本を買えなくなったな。それなのに碌でもないものが多いし。


森永卓郎『なぜ日本だけが成長できないのか』読了。キャッチーな題名の新書であり、これからは凡庸な経済関連本であると思われるかも知れない。本書は新聞広告にあったのを老母が教えてくれたもので、以前から森永卓郎さんを信頼してきた自分は興味をもって購入したものである。一読して非常に感銘を受けたし、センチメンタルなことに、読んでいてかなしくて仕方がなかった。よくここまで書けたものだ。経済アナリストとしてはほぼこれが限界に近いであろうし、下世話な話、ここまで書いて森永さんは大丈夫なのだろうか。
 って中身について書いていないので、何のこっちゃでしょうね。まあ、簡単に要約できる本ではないが、ある意味では(ホントにある意味でにすぎないのだが)題名どおりの本といってもよいだろう。本書は 1985年のいわゆる「プラザ合意」から始まる。そして、いわゆる「バブル経済」の崩壊、小泉政権時代も含め、「日本」が切り売りされていく様子が、新書レヴェルでは充分な精度で、著者自身の回想も含めて描かれていく。そこで指摘された「シナリオ」は、わたしにはほとんど聞いたことがないものだったが、自分の乏しい知識でも大変な説得力があった。正直言って、本書は「経済」の話を超えているともいえる。むしろ、文明史的な観点からも読めるくらいのものであろう。わたしは本書のすべてが正しいとは盲信しないし、本書には(その性格上)憶測が(しかしたんに「憶測」にすぎないと簡単に切り捨てられないものであるが)混じっていることも認める。あるいは「陰謀論」であると一刀両断される方もいるだろう。どうも、中身を詳しく書く気が起きない。おそらく、本書が世の話題になることはないと思う。
 それにしても、ここでも「対米従属」の問題であるか。本書の最後に、唐突に青山透子氏の『日航123便墜落の新事実』という本が出てきて驚いた。これは老母が見つけ出してきた本で、一読してわたしは深い感銘を覚え、簡単な感想をこのブログにも記したことがある(参照)。一般には、「陰謀論」として切り捨てられている書物である。さて、日本はどこで悔いの残る(とわたしには思われる)、誤った選択をしてしまったのか。つくづく思うが、簡単にしてしまった選択があとで大変なことになり、もはや「後の祭り」になってしまうと、我々は虚ろな日々を送らざるを得なくなる。本当に、我々はどこでこんな道に踏み込んでしまったのだろうか(それに迫ったのが本書であるといえるだろう)。いずれにせよ、本書はこれからのわたし個人における思考の叩き台として、確固たる地位を占めることになったといってよい気がする。

しかし、「売国奴」という言葉があるが、まさにその文字どおりのことをやって大儲けしてきた人たちがいるのだな(例えば木村剛氏や竹中平蔵氏のことをいう)。いろいろな人生があるよ、世の中には。


シューベルトの「さすらい人」幻想曲 D760 で、ピアノはレオン・マッコウリー(NML)。これはすばらしい演奏だった。この曲でひさしぶりに感動した。どんなピアニストであるかはまったく知らない。この曲はどちらかというとヴィルトゥオーゾが弾く曲で、ポリーニリヒテルの名演があることは周知であろうが、それらに比較するとこの演奏が軽量級であることは確かに否めない。別に技術に不足があるわけではないけれど、バリバリ弾くという感じではない。しかし、この曲をよくわかっているなーという感じ。というか、なるほどこんな曲だったのかというような、発見が随所にある演奏だったと思う。特に第二楽章の美しさにはまいった。飛び抜けた技術がなくとも、よい演奏のできることを教えてくれるそれだといいたい気持ちである。

Schubert: Piano Music

Schubert: Piano Music

シューベルトの三つのピアノ曲 D946 で、ピアノはレオン・マッコウリー(NML)。これもよかった。というか、第二曲はロンド形式なのだが、その第二中間部(変イ短調)のパフォーマンスがすばらしかった。ちょっと泣けたくらいである。自分はここの部分が好きなのだが、なかなかこれほどのものは少ない。マッコウリーというのはイギリスの中堅ピアニストということであるが、よい人を見つけたと思う。他にも NML に入っているものがあるので、是非聴いてみたい。