太田博樹『遺伝人類学入門』 / 青山透子『日航123便 墜落の新事実』

晴。
よく寝た。ちょっと脳が疲れているな。おもしろい夢は見たのだが。

NML で音楽を聴く。昨日ほどではないけれど、まだサイトに繋がりにくい。■ベートーヴェンのピアノ・ソナタ第二十五番 op.79 で、ピアノは園田高弘NMLCD)。

太田博樹『遺伝人類学入門』読了。副題「チンギス・ハンのDNAは何を語るか」。とてもおもしろい本だった。キャッチーな副題はほぼ釣りであって、本書は遺伝人類学に関する優れた啓蒙書であるといえよう。技術的なこともかなり書いてあってうれしいが、まあなかなかむずかしいので自分もテキトーな理解である(笑)。本書の解説過程でいわゆる「進化の中立理論」について一章を割かれてあって、木村資生氏の理論がついに科学の中で常識化したことを知った。僕が学生だった頃はまだ「進化の中立説」という呼び方で、その真偽がホットに議論されていたが、いまや分子遺伝学レヴェルでは、自然選択よりも進化の中立理論の方が当り前であるらしい(さもあろう)。木村氏は早世されたのでノーベル賞は貰っていないが、長生きされれば間違いなく受賞されていた筈である。科学に日本人も何もないのであるが、正直言ってうれしい気がする。ちなみにこれは数学を駆使した理論で、完全に理解するのはかなりむずかしいです(僕も勉強したのだが、細かいことはもう忘れてしまった)。著名な物理学者であるフリーマン・ダイソンが「中立説」を解説した小冊子があって、分子生物学をやっていた僕の友人がそれを読んでいたのをなつかしく思い出す。四半世紀前の話だ。
 って進化の中立理論に言及したのはペダンティズムではなくて、遺伝人類学にはこの理論が重要だからである。まあ自分にはここでそれを説明する力はないので、本書をお読み頂きたい。いまよく刑事事件の捜査などでDNA鑑定が行われたり、日本人のルーツをDNAで探るというような話がよくあるけれども、それら(特に後者)は本書の解説する領域である。この分野をきちんと理解するのは分子生物学に加えて数学の知識が必須であるのだが、本書は概説ではあるがなるたけわかりやすく説明してくれる(それでもたぶん一般人にはむずかしいだろう)。なんとか頑張って、最後の方の縄文人弥生人とか、チンギス・ハンの遺伝子とかいうあたりまで読んで下さい。おもしろいですよ。
 しかし、いまの学問はむずかしいですな。統計学は知らないといけないし、コンピュータで解析できないといけないし。僕の学生の頃と比べると、必要な知識が圧倒的に多くなった。いまの学者は優秀でないとつとまらないですな。

遺伝人類学入門 (ちくま新書)

遺伝人類学入門 (ちくま新書)

図書館から借りてきた、青山透子『日航123便 墜落の新事実』読了。副題「目撃証言から真相に迫る」。母から廻してもらった本。母から事前に聞いていたのだが、まことに驚くべき内容だった。というか、正直言ってあまりにもひどい話で泣けてきた。この日航機の墜落事故のことは自分も鮮明に覚えている。あれは1985年8月のことであったのか。著者の記録だと夜七時のNHKのニュース中に緊急報道で日航機行方不明のニュースが入ったとのことだが、自分もまさにそれを見ていたにちがいない。高校生のときだった。番組は特番に切り替わり、夜遅くまで特番を見続けていたが、結局飛行機はどこへ行ったかわからず、そのまま寝たのであった。翌朝のニュースで御巣鷹山(いまでも覚えているのである)への墜落を知った、そんな次第であった。しかし本書を読むと、早い段階でNHKも墜落地点を知っていたにちがいないことがわかる。まさしく、ここでもウソが流されていたのであった。
 詳しい話は本書にあたって頂きたい。本書はかなり控えめに書いてあって、できるだけ憶測を交えない形で書かれている(ちなみに、著者は日航の客室乗務員であった方だ)。まず、事故の原因は何らかの対空ミサイルであったらしいこと。これはかなり確実であると思う。ただしそれが自衛隊のものなのか、米軍のものであったのかはわからない。ただし、これは自分の憶測だが、ミサイルには爆発物質は搭載されていなかったようで、訓練用のものであったかも知れないと思う。「実弾」であったら、日航機はおそらく空中爆発していたように思われるから。
 そして自衛隊は事態をきわめて早い段階から把握していて、二機のファントム戦闘機がずっと日航機に並んで飛んでいた。これには多くの目撃証言があって、疑いはないにも関わらず、一切公式の形で発表されたことはない。また、墜落地点も墜落直後に(自衛隊と米軍にとって)判明しているにもかかわらず、そして地元からの再三の要請があったにもかかわらず、翌日まで救助がおこなわれていない。現場に行った専門家の判断だと、墜落直後に救助されていれば*1、100名近い人命が助かった可能性もある(実際には4名)。
 しかし、以上のことが事実であるにせよ、その政治的背景がほとんどわかっていない。なんらかの政治判断、それもアメリカに対する政治判断がなされたことは明白であるが、それ以上のことはまったく闇に包まれている。じつは、当時の運輸大臣であった山下徳夫氏が後年(驚くべきことに)みずからコンタクトをとって著者と会っているが、そこでも事件の真相に関することは一切述べられておらない。ただ、「日本はアメリカのいいなりである」ということのみ仰られたそうだ。ここでもまたそれか。

日航123便墜落の新事実  目撃証言から真相に迫る

日航123便墜落の新事実 目撃証言から真相に迫る

なお、自分は過去の報道から日航機は事態の発生後に機体のコントロールをほとんど失ったかのように思い込んでいたのだが、亡くなられた乗客の手記や生存者の証言から、そのようなことはなかったらしい。実際、伊豆半島付近で異常事態が発生したあとの目撃証言からも、それが推定されるし、どうも機長は最初横田基地への不時着を考えていたかのようなふしがある。しかし、どうも途中からそれは「許されなかった」かのようで、最終的に機体は進路を変え、群馬県に墜落した。そのあたりも腑に落ちないものがある*2

よろしければ母の感想も見られたい。また、このエントリでリンクされている森永卓郎氏の論説も是非お読み頂きたい。
http://octpus11.hatenablog.com/entry/2018/06/07/151307
 
しかし自分は、アメリカ人がフェアであるという俗説を信じなくなってきている。いや、多くのことにおいてアメリカ人はフェアであるかも知れないが、政治的軍事的には日本に対してまったくフェアでない。そのように思わされることが多すぎた。一方で、日本人の卑屈さも情けないのだが。もはやこの卑屈さは、永遠に抜きがたいものなのかと思う。少なくとも自分はそのように卑屈でありたくないとは思っているが、どうなのだろうか。

追記。Wikipedia に該当する項目*3があったため見てみたが、異様なまでに詳細を極めているにもかかわらず、政府などの公式見解を疑うような内容は少ない(それでも一部矛盾の指摘はある)。これを見ると、公式見解の内容がわかるといえよう。また、本書にもあるが、この事故に関する陰謀論は多数あるようで、著者がそのような陰謀論と同一視されることを望まない姿勢が、本書にははっきりと出ている。本書の議論は科学的な態度といってよい。

再追記。もう一度本書の一部を繰り返し読んでみたが、よく読めていなかったところがあったので少し書いておく。やはり機長は最初横田基地への不時着を考えていた可能性がある。しかし、大月上空で何度も旋回したあと、進路を明らかに変えている。それは、ちょうど自衛隊のファントム二機が日航機に追いついた頃である。なので、自衛隊機との「交信」後、進路を変えたとも考えられる。自衛隊機の存在は確実なので、「交信」がなかった筈がない。すなわち、公開されたボイスレコーダーから「交信記録」が取り除かれているのである。公開されたボイスレコーダーの音声が編集されていることは既にわかっていて秘密でも何でもないが、もちろんそれは証拠隠滅のためとはなされていない。
 また、日航機に命中した対空ミサイルは、一発ではなかった可能性が高い。自分が上で書いたとおり、最初に命中したもの*4日航機のコントロールをさほど奪わなかったようである。亡くなった乗客のメモ(遺書でもある)から、「ドカン」というのは二回あったように読めるし、どうやら旋回後の二度目の「ドカン」から急速に高度が下がったらしい。いろいろ読むと、二発目の対空ミサイルは熱線追尾型で(地上から多数目撃された「赤い光」は、ミサイルの推進炎か?)、日航機はそれを振り切ろうとしていた可能性がある。大月上空の旋回はそれで*5、機長はそれを自衛隊機との交信で知ったのかも知れない。そして、進路を変えた。それが自分にはいちばん納得できる憶測である。

書こうか迷ったのだが、簡潔に書いておこう。炭化した遺体の状況から、墜落後に自衛隊が現場に入り、証拠隠滅のため火炎放射器で機体の該当箇所を焼き払った可能性が高い。その際、まだ生きている人が救われなかったどころか、火炎放射器によって殺害された可能性がある。まだ、かなりの人が生きていたことがわかっているので。これがどの時点で、どの部隊によってなされたかはわからないが、たんなる憶測ではないことを申し添えておく(部隊も推測し得る)。事実であれば、これが人間のすることであろうか。

*1:生存者の証言によれば、墜落直後にヘリコプターが近づいて着陸態勢にまで入ったのであるが、それはそのまま再上昇して飛び去ってしまったという。これは米軍座間基地の救難ヘリであったらしい。何らかの命令変更があったものと思われる。(後記:ヘリのパイロットの証言があるようだ。You Tube で見られるらしい。)

*2:しかしこれは完全な憶測である。公表されたボイスレコーダーにはそのような記録はないのだし。横田 RAPCON は冷静な対応で、羽田と横田へ再優先で着陸できる旨交信している。むしろ自分こそ陰謀論に陥っているか。なお、「横田 RAPCON」について御存知ない方は、調べてみるとよいと思う。いろいろとわかることがある筈。

*3:日本航空123便墜落事故 - Wikipedia。これだけでもわかることがだいぶあるのは確か。

*4:ネット上で、これは無人標的機であろうとの推測を読んだ。そのあたりは自分にはわからない。

*5:ミサイルは機体の左側から追尾していたのだろう。目撃証言や乗客の遺した写真(があるのだ!)とも一致する。途中まで日航機がすべて右旋回している理由はそれではないか? なお、公式発表の時系列は乗客の遺書(多数に時刻が書いてある)と辻褄があわない感じがする。