吉増剛造『ブラジル日記』/養老孟司『養老孟司の〈逆さメガネ〉』/玄侑宗久『無功徳』

曇。
今日からまた早朝出勤。
音楽を聴く。■バッハ:ソナタBWV1020、BWV1022、フーガBWV1026(ムジカ・アンティクァ・ケルン、参照)。■メンデルスゾーンピアノ三重奏曲第二番op.66(ニコラス・アンゲリッチ、カピュソン兄弟)。これは名演。何という生き生きとした演奏! アンゲリッチってよく知らないピアニストだが、躍動感に溢れている(アルゲリッチではないんだよね?)。室内楽好きなら、ルガーノ音楽祭のディスクを聴かないという手はないよ。

Live From the Lugano Festivals 2005

Live From the Lugano Festivals 2005

ショパン:バラード第一番op.23(ルービンシュタイン)。何と、これほどレヴェルの高い演奏だとは。これはこれで、完璧。
Rubinstein Collection 45

Rubinstein Collection 45


図書館から借りてきた、吉増剛造『ブラジル日記』読了。
ブラジル日記 (Le livre de luciole (32))

ブラジル日記 (Le livre de luciole (32))

養老孟司養老孟司の<逆さメガネ>』読了。面白すぎますな。例えば、脳への入力は、視覚・聴覚・味覚・嗅覚・触覚など色々あるけれど、出力は筋肉へしかないとか。ははあ、ものを言うのもキーボードをタイプするのも、筋肉の力だよな。他にも色々ある。例えば、子供は自然だということ。これだけではわからないと思うので補足しておくと、自然というのは「人工」ではない、という意味。つまり、子供は虫とか植物なんかと、同類だということである。今は虫がこわい女の子はいくらでもいるので、自分の子供もこわいかも知れない。子供は自然だから思うままにコントロールできないのだが、何でもマニュアルがないと不安な親は、自然をコントロールできると思うように、自分の子供にもそうするだろう。これは養老先生お得意の、都市化(=脳化)の問題でもある。
 本書を読んでいて、少子高齢化の問題もむずかしいなあと感じた。養老先生は直接書いてはいないのだが、先生によると、昔は子供は「授かりもの」だったという。これも人為的なコントロールをしていなかったのだが、今や子作りは経済的合理性の問題になった。しかし、経済的合理性の問題となると、結局子供を作らない方が、合理的になるのではないだろうか。だから、日本人が子作りを経済的合理性の問題だと考えるのをやめないかぎり、少子化の流れは止まらないのかも知れない。いや、養老先生がこう書いているわけではないので、誤解されないように。
 養老先生の新書はよく「ブ」で108円で売っているので、それを拾ってくると本当にためになる。語り口がやさしいからといって、かしこい人が馬鹿にしているからといって、中身を侮ってはいけない。本当に考えている、数少ない人のひとりである。恐るべき「知」の野蛮人だ。
養老孟司の“逆さメガネ” (PHP新書)

養老孟司の“逆さメガネ” (PHP新書)

玄侑宗久『無功徳』読了。本書を読んでいると、自分の心にまだまだ汚い部分がいっぱいあることに気づかせられる。まったくこの齢にして、前途は遼遠。
無功徳 (PHP文芸文庫)

無功徳 (PHP文芸文庫)