特殊相対性理論の理論ミニマム

アインシュタインの論文をざっと眺めてみたので、(特殊)相対性理論の「理論ミニマム」(最小限度の仮定で理論を導く)を考えてみた。と云っても、すっきりと書かれた教科書はすべてそうなっているので、別にそれらを読めばいいのであるが。まあ、教科書によって、それぞれ少しづつ流儀がちがうということはある。まず、次の本を挙げておく。きわめてすっきりした内容で、有名な入門書だ。

相対性理論 (物理テキストシリーズ 8)

相対性理論 (物理テキストシリーズ 8)

とてもわかりやすいのは下の本。
相対性理論30講 (物理学30講シリーズ)

相対性理論30講 (物理学30講シリーズ)

いずれも、一般相対性理論まで含んでいる。

さて、理論ミニマムだが、まず

・すべての物理法則は、いかなる慣性系を基準に採ろうと、まったく同じ形式で表現される(相対性原理)
・真空中の光の速さは、光源の運動状態に無関係である(光速度不変の原理)

の二つを要請するのは標準的だろう。「相対性原理」から、特殊相対性理論というのは、二つの慣性系 の間の変換理論(ローレンツ変換)だということがわかる。ただし、 等々である。慣性系の間には、
   
  
とおくと、「光速度不変の原理」より すなわち

  

が成り立つ。また、慣性系の間の座標変換は、1次、その中でも特に
  
の形のものであることは要請しなければならない。これは、慣性系どうしがお互いに対し等速直線運動をし、かつ座標原点が一致することを要請しているのに等しいわけである。

 これで、細かいところは端折ったが(本当は、光速度不変の原理の取り扱いは、もっと詰めねばならない)、ミニマムな仮定はこれだけである。しかし実際は、座標変換は
  
としておけば本質的に充分だ。ここで、S'の(空間部分の)座標原点が、Sのそれに対し速さ v でx軸の正の方向に走っていると仮定すると、
  
であるから、すなわち となる。したがって、
        (1)
となる。光速度不変の原理より、t=t'=0 に(空間)原点から発した光の運動を考えて
   
すなわち x=ct, x'=ct' なので、
  
これらは同じ式なので
  
となる。したがって
         (2)
式(1)と(2)を逆に解くと
  
  
となるが、これらは最初の変換式(1) で、v を -v に換えたものと一致せねばならない。すなわち
  
で、v→0 のとき a=1 を考慮すると、平方根は正を採って
  
が得られる。これで座標変換の係数が求まった。すなわち、

  

これが(特別な場合の)ローレンツ変換である。特殊相対性理論は、基本的にこれがすべての土台になるわけだ。よって、これが(大体の)理論ミニマムである。