藤田達生『秀吉と海賊大名』/安岡章太郎『鏡川』/森永卓郎『リストラと能力主義』

晴。

藤田達生『秀吉と海賊大名』読了。伊予河野氏。毛利氏。長宗我部元親。信長。秀吉。西国における、伊予の地政学的重要性。
 本書の最後に、著者によって次のようにまとめられている。
「小著では、秀吉による瀬戸内海賊世界の再編過程を三段階にわけて説明したが、まとめると次のようになる。すなわち瀬戸内海賊世界は、秀吉が信長重臣時代以来の長年に及ぶ外交交渉の末、天正十三年(一五八五)に豊臣大名となった毛利氏に委ねられた(第一段階)。天正十五年の九州国分に伴う小早川氏の国替の際に、秀吉は毛利氏と『共謀』して海賊大名河野氏を断絶に追い込み、賊船行為を繰り返す村上氏を九州に『追放』した(第二段階)。その結果、直臣大名に海域支配をゆだねることで瀬戸内海賊世界は決定的に変質した(第三段階)。そこには、中世の否定というべき厳しい現実があったのである。」(p.192-3)
 なお、信長によって追放された将軍足利義昭は、備後鞆の浦に逃げ、そこで鞆御所を構えたという。著者は「鞆幕府」とすら呼んでいる。鞆の浦は、家族で旅行したことがあるのだが、こんなことは知らなかった。もちろん鞆の浦自体は、古くから瀬戸内海の重要な港として栄えてきたのである。今でも、古い町並みがまだ残っている。

秀吉と海賊大名 - 海から見た戦国終焉 (中公新書)

秀吉と海賊大名 - 海から見た戦国終焉 (中公新書)

安岡章太郎鏡川』読了。
鏡川 (新潮文庫)

鏡川 (新潮文庫)

森永卓郎『リストラと能力主義』読了。「このことは、日本の企業内で相当強力な所得の再分配がなされていることを意味している。同じ釜の飯を食う以上、会社に貢献していてもしていなくても、ほとんど同じ水準の給与が支払われる、この企業内での平等主義が、日本の年功序列システムのいちばん大きな特徴なのである。」(p.45-6。下線原文)「それでは、終身雇用制のほうは、どう解釈すべきなのか。(中略)重要なのは、終身雇用制がライフタイム・エンプロイメントではなく、ライフタイム・コミットメントだということである。入社をしたら、キャリア形成のことをあれこれ悩んだりせずに、すべて会社にまかせてしまう。」(p.46)今ではこうではないかも知れないが。
リストラと能力主義 (講談社現代新書)

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