岡崎武志『上京する文學』

晴。
歯医者。今回でとり敢えずお終い。
図書館。國分功一郎岡崎武志を借りる。
音楽を聴く。■ハイドン:ピアノ・ソナタ第四十四番、第四十番(リヒテル)。リヒテル晩年の録音は、どれも音楽そのものを堪能できる。見事な歳のとり方だ。音も曲に即したタッチで美しい。■モーツァルト:ピアノ・ソナタ第十八番(ピリス新盤)。よく考えられた、いわゆる音楽的な演奏で、自分もしばしばピリスのモーツァルトは聴くわけだが、音がもう少し美しいといい。ちょっと濁っている。こういうところは感性がモロに出てしまうのであり、そこが超一流との境界だ。むずかしいものである。
2012年秋・冬_29
図書館から借りてきた、岡崎武志『上京する文學』読了。副題「漱石から春樹まで」。上京とは、言うまでもないが、地方から東京へ出てくるということである。本書は、その上京者がいかに文学を創ってきたかという点に着目した評論だ。その着眼点がまず冴えている。ちなみに、著者本人も上京者だから、その気持ちがわかってしまうところもあろう。著者の目配りは広く、様々な書物に目を通していて、またそれが上手く使われており、危なげがない。こうした実力は、敵わないなあと思わせられる。自分も田舎育ちで、まあ東京ではなく京都の方へ行ってしまったが、仮に上京者であっても、比較するのも愚かだが、これほどのレヴェルのものは書けなかったにちがいない。残念なことがあるとすれば、一編一編が短く、もっと読んでいたいのに、と感じてしまうところがあったことだ。さらに本格的な評論にできそうなテーマが鏤められていて、贅沢である。
 本書で取り上げられている文学者は全部で十八人で、個人的に特に印象の残ったのは、石川啄木山本周五郎宮沢賢治林芙美子松本清張寺山修司などであろうか。彼らの著者が読んでみたくなったことである。開高健稲垣足穂などは、予定していて叶わなかったそうだが、これも読んでみたかった。

上京する文學―漱石から春樹まで

上京する文學―漱石から春樹まで

音楽を聴く。■シューマン:交響的練習曲op.13(リヒテル)。