日曜日。晴。
中井久夫『統合失調症の有為転変』読了。大著というわけではないが、日曜日の丸一日を費やしてしまった。中井先生の書かれるものは、いつもふうふう喘ぎながら読む。ちなみに、自分は中井先生の本を、精神病に関する知的興味から読むのではない。そのことは、断っておこうと思う。しかし、中井先生の本を読んで、知的興味を感じ、精神科医になろうという若い人が出れば、それは素晴らしいことだ。
さても、本書にもちらっと出てくるが、アメリカの精神医学界(に限らないだろうが)はひどいことになっているようだ。病院が保険会社に買収され、経営されることで、治療の選択が医師の手を離れてしまったのである。まさに、『貧困大国アメリカ』の話そのままだ。もし日本もそうなったら、どれだけ優秀な医者がいてもオシマイである。中井先生の本の話としてはあまり相応しくないことを書いてしまったが、先生の本業の話が素晴らしいことは、多くの人にわかっていることでもあるから、脱線した。本書は繰り返しが多くなっているのが先生の年齢を感じさせないでもないが、相変らず緻密な論考もあり、また過去の回想は却って貴重である。先生の工夫された、絵画療法の話が多い。統合失調症患者ほど、どんなに苦しくとも、自分の自我にこだわる人たちはいない、そう先生は言う。――じつに、多くの人に手に取ってもらいたい本だ。
- 作者: 中井久夫
- 出版社/メーカー: みすず書房
- 発売日: 2013/08/03
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (7件) を見る
- 作者: 長嶋有
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2007/01/01
- メディア: 文庫
- 購入: 1人 クリック: 59回
- この商品を含むブログ (141件) を見る
田中秀臣先生がブログでsayaについてアツく語っておられたので、試しにそこに貼り付けてあった「漂白の旅路」という曲を聴いてみたのだが、心に何の感情も沸き起こらなかったので驚いた。完全な不感症である。自分は何にも知らないが、saya っていう名は最近よく見るし、リスペクトされているのかと思っていたのだが。正直言って、この曲に限って云えば、音楽的には何も新しいところがないと思う。まあ、そうした聴き方がいけないのかも知れないが、これは音楽的退廃ではないのだろうか。時代を引き受けている人が、こんなことでいいのだろうか。好きな人は、御免なさい。何の悪意もありませんので。