波多野精一『時と永遠』/ライプニッツ『形而上学叙説/ライプニッツ‐アルノー往復書簡』

晴。
音楽を聴く。■メンデルスゾーンピアノ三重奏曲第一番op.49(アルゲリッチ、シャハム、マイスキー)。
カルコス。

波多野精一『時と永遠』読了。著者は宗教一般を云うけれども、結局はキリスト教のことしか語っていない。仏教などはまったく、一ミリたりとも視野に入っておらず、そこのところが不満と云えばそうだったのだが、まあそれは無いものねだりというものかも知れない。恐らく、仏教に関しては理解が殆どなかったのだろうと推察される。キリスト教、西洋思想に関する学識は深く、また論理的に語るということについて、偶々ながら自分には大きなものを与えてくれたので、それは深く感謝したい。著者は、旧制高校的な大秀才と云えるかと思う。

ライプニッツ形而上学叙説/ライプニッツ‐アルノー往復書簡』読了。新訳。やわらかく明晰な翻訳で、非常におもしろかった。岩波文庫の河野与一訳を見てみると、とても硬い訳で、中身を覚えていないはずである。この訳で読んでみると、特に「形而上学叙説」はそれほど難解というわけではないが、謎のように思える箇所は幾つかある。「往復書簡」の方は、「叙説」の内容に関する応答で、かなり厄介な部分も多い。自分にはアルノーの当惑の方がわかるところもあって、特にライプニッツの「表現」という語の使い方は、アルノーではないがわかりにくい。これがモナドに繋がっていくのか。また、ライプニッツは、「物質が無限に分割可能であるいじょう、どれほど小さな部分であっても、そこにもはや生命がないような、そんな部分を指定することなどできない」(p.297-298)などと述べているように、物質にも生命を認めかねないような勢いである。
 なお、訳者解説はドゥルーズの『襞』を下書きに書かれていて、とても勉強になった。以前に『襞』は目を通していた筈だが、何もわかっていなかったようである。今ならおもしろく読めそうなので、本棚から抜いてくるつもりである。
形而上学叙説 ライプニッツ−アルノー往復書簡 (平凡社ライブラリー ら 7-1)

形而上学叙説 ライプニッツ−アルノー往復書簡 (平凡社ライブラリー ら 7-1)

襞―ライプニッツとバロック

襞―ライプニッツとバロック