「雨に唄えば」(1952)を観る / 「夢見る男子は現実主義者」(2023)を観る

日曜日。秋めいた曇り空。涼しい。
あんなにうるさいくらい、朝から蝉が鳴いてたのに。虫が鳴く。
 
BBC Proms - 2024 - Prom 43: Pictures at an Exhibition - BBC Sounds
BBCプロムス2024の、山田和樹指揮、バーミンガム交響楽団の演奏会配信の前半を聴く。音楽を聴く気分でも何でもないのだが、山田和樹ラヴェル組曲マ・メール・ロワ」ということで、聴く誘惑にちょっと克てなかった。予想どおり、色彩感豊か、繊細で、充分満足できる演奏。一気に目が覚める。2024.8.22 のライブ録音。
 山田和樹(1979-)は何となく軽く見られそうな音楽家であるが、(個人的に)佐渡裕さんがよくわからなくなってきた、というか冴えない感じのいま、(あまり知らないのではあるが)わたしがもっとも楽しみにしている日本人指揮者である。なんといっても、武満さんのアルバムは大げさにいうなら、衝撃的な名盤だった。小澤征爾さんとも佐渡裕さんともちがう、日本人らしい指揮者で、ちょっと他にいない、独特の才能にして実力者であると思う。とにかく指揮者(だけではないが)はいま世界的にレヴェルが下がり、人材が払底しているので、山田和樹は貴重な存在だ。
 ラヴェルのあとはモーツァルトのピアノ協奏曲第二十七番 K.595 で、これがまたフレッシュなモーツァルトラヴェルから、パッとこういうモーツァルトに切り替えられるというのが、既に実力者の証拠である。ただ、ここでは主役であるピアノのポール・ルイスが凡庸という他なく、途中で聴き止めた。
 
 
昼食に老母が畑のバジルから(苦労して)作ったジェノベーゼを使ったパスタを食う。田舎の食卓にしては、高級な味になっていておいしかった。
 
U-NEXT で『雨に唄えば』(1952)を観る。いまさらわたしなどがいうまでもないが、めっちゃおもしろかった。コメディの部分は大笑いしたし、雨の中でジーン・ケリーが歌い踊る(有名な)シーンは、あまりの(心情的)美しさに思わず涙が出てしまったほど。話としてはまったくシンプル、へんなことをいうが、ある種のアニメの方が遥かに繊細・複雑であるけれど、このシンプルさが古典なんだろうな。ラブストーリーはつけ足しみたいなもの、最後はもちろんハッピーエンド。103分。

なお、こういうことは書かない方がいいのかも知れないが、悪意はない、無意識の時代的「女性の商品化」コードは、どうしてもこの現代、わたしですら気になってしまう。古典的名作だし、それを考えて寛容になった方がいいのではないか。ほんと、アニメなんぞを喜んで観ている人間がいうことではないが、むずかしい時代である。
 
蓮實重彦を読む。
 
夜。
『夢見る男子は現実主義者』(2023)第12話(最終話)まで観る。作画のイマイチなつまらんラブコメ、というような評価が多く、全然期待せずに観始めた。確かに、主人公、最初の方は特に、どこかヘンなんだよね。でも、何となくやめられずに、釈然としないまま観ていたら、段々おもしろくなってきて、結局気づいたら深夜までかかって一気観していた。とにかくラブコメに期待されるものが素直に提供されないので(そもそもコメディがあるのか?)、つまらんと思う人が多いのはわかるが、自己評価のきわめて低い主人公の変化(次第に人の気持ちがよくわかる、他人を気遣える人間になっていく)が自分にはおもしろかった(自己評価は最後まで低いけれど)。また、メインヒロインが最後を除いて、あまり活躍しないのも変わっている。確かにメインヒロインは、自分に熱をあげていた主人公が突然変わってしまって、とまどうばかりなんだよね。で、最後、積極的になるのも、メインヒロインの方。ま、これ以上は分析しない。よい意味で期待が外れて、おもしろかったです。人気がないので2期はないだろうけれど、これで充分満足。世評の低い作品が、自分に刺さらないとは限らない、って例だった。