横手慎二『日露戦争史』/「三尾公三展」に行ってきた/別宮暖朗『日露戦争陸戦の研究』/『思想地図β vol.1』を読む

晴。
カルコス。

昼から、岐阜県美術館の「三尾公三展」に行ってきた。クールでモダン、なかなか良かったです。写真を意識したであろう、スーパー・リアリズムで描かれた人間の顔及び顔のパーツ(眼など)が特徴で、マグリットをさらにモダンにしたような、シュルレアリスムの画家だと云えようか。写真週刊誌「フォーカス」の表紙を長らく描いたことでも有名だが、モダンアート的な作風は確かに現代にマッチしてはいるけれども、商業主義に消費されてしまう画家でないのもまた確かだ。個人的には、女性のヌードをあしらった、多少エロティックな作品が特にいいと感じた。
 会場は意外に人がきていた。若い女性の姿もちらほら。展覧会としてはまあ成功したようで、その証拠に図録は完売していた。絵を観ながら図録を買おうという気になっていたので、完売はちょっと残念でした。会期末になってから行くと、こういうことになる。


横手慎二『日露戦争史』読了。日録に書く。

日露戦争史 - 20世紀最初の大国間戦争 (中公新書)

日露戦争史 - 20世紀最初の大国間戦争 (中公新書)

次いで、今日買ってきた別宮暖朗日露戦争陸戦の研究』を読み始めたのだが、60頁ほど精読して嫌になってしまった。ちくま文庫の名を汚す愚著である。愚著たる所以を論証する気もないが、ちょっとだけ引いておこう。あとがきにこうある。「それでも作戦計画だけでは戦闘に勝利することはできない。各級司令官は与えられた命令の枠内で、独立して戦闘行動を決心し、それに見合った最適な戦機を発見せねばならない。最後は、戦場にいる兵士の勇気こそが決定的要素である。」(p.288)一見正しそうにもみえる意見だが、兵士の「勇気」(「士気」ではないのか)は、戦争に必要ではあるけれども、それだけでは十分ではない。むしろ、そのような「精神主義」こそが、無謀な太平洋戦争での敗北をもたらしたのではなかったか。
 文庫版あとがきにはこうある。「それに反して、日本兵の戦闘振りは見事であった。現場にいた将軍の指揮も優秀であった。帝国陸軍は現場が優れ、エリート参謀のつくる作戦計画がいつも劣っていた。」(p.294)そう、現場が独走した日中戦争は、いったいどのような結果になったというのか。
 また、本文でもロシアを、約束を守らない、「不信の国」(p.57)と呼び、ニコライ二世の「気質」(p.28)が歴史を動かしたように書くのは、小説ならともかく、歴史書の採るべきやり方ではないであろう*1。素人の歴史談義という他ない。

日露戦争陸戦の研究 (ちくま文庫)

日露戦争陸戦の研究 (ちくま文庫)

東浩紀編集長『思想地図β vol.1』を読む。とりあえず、特集第一部「ショッピングモーライゼーション」まで読了。確かに読み応えはあった。反発・共感こもごも。読んでいて、ショッピングモールとは、突飛な連想かもしれないが、物造りに対するハイテク金融商品みたいだな、と思った。それからまた、いま自分が岐阜なる田舎にいるという事実は大きいとも思わされた。ちなみに、自宅から車で10分程度のところに、イオン各務原店というショッピングモールはありますよ。ここは国道と高速道路の結節点で、いわゆる「ファスト風土的」郊外でもある。自分の行きつけの本屋である、カルコス各務原店があるのもこのあたりです。
思想地図β vol.1

思想地図β vol.1

*1:これは全くの推測だが、本書を読んでいると、著者はロシア語の資料を使っていないように感じる。ロシア・ソ連の軍事・外交資料が活用されていないのではないか。