池上英洋『官能美術史』

晴。
音楽を聴く。■モーツァルト:ピアノ協奏曲第十九番K.459(ブレンデル、マリナー)。定番的演奏。いい曲だな。■ショスタコーヴィチ弦楽四重奏曲第十一番op.122(エマーソンSQ、参照)。■ヴァレーズ:ポエム・エレクトロニク、アルカナ、ノクターナル、暗く深い眠り(シャイー、参照)。質の高い演奏。

池上英洋『官能美術史』読了。図版多数。西洋絵画をエロティシズム(あるいはエクスタシー、あるいはポルノグラフィー)という観点から切り取ったもので、なかなか楽しまされて感心した。今ではあまり有名でもない(しかし同時は人気のあった)画家に、リアリスティックで官能的な絵がたくさんあることを知って驚かされた。そういうのが、なかなかいい。アカデミーの画家など、相当にエロティックな絵を描いているのに、当時のコードの内部だったので、何のスキャンダルにもならず、却って例えばマネの絵画などが物議を醸したというのだから、不思議なものである。個人的なことを云えば、ウィリアム・アドルフ・ブグローという画家の絵が本書にいくつか図版として収録されているが、これなんか好みである。全然知らない画家なのだが。いや、今ではネットでいくらでも強烈な画像を見られるので、本書の図版はそれに比べればおとなしいものだが、青年男性(別に女性でもいいですが)なら楽しめるでしょう。ちゃんとした西洋美術史家がこういう本を書いたのは、意外とないのではないか。だから、美術史の知識があれば、さらに楽しめること請け合いです。決してレヴェルの低いものではありません。

ブグローの絵画に関してはこちらがコンパクトにまとめてあって、わかりやすい。きれいな図版があります。それから、ブグローが印象派と同時代の画家で、アカデミストとして印象派の画家たちを認めなかったことはこちらにおもしろおかしく書いてあるので、見てみると笑えます。