「渡辺省亭―欧米を魅了した花鳥画」展を観に岡崎へ

晴なるも雲多め。溽し。

NML で音楽を聴く。■バッハのパルティータ第一番 BWV825 で、チェンバロスコット・ロスNMLCD)。

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愛知県岡崎市岡崎美術博物館へ、「渡辺省亭―欧米を魅了した花鳥画」展を観に行ってきました。きっかけはお昼の地元NHKの番組で紹介されたもので、わたしが一見して観たくなったので、それでは家族で行こうということに。岡崎までは高速道路を乗り継いで一時間半ほど。初めて訪れる美術館だとばかり思っていましたら、到着して建物を見て、何十年か前にひとりで来たことがあるのを卒然と思い出しました。さて、何を見に来たのだったか…。
 渡辺省亭(せいてい、1852-1918)は江戸末期から大正時代にかけての日本画家で、一般にそれほど知られているとはいえないでしょう。わたしも知りませんでした。しかし西洋画を既に知っている我々からすると、その魅力はわかりやすいもので、これから人気が出てもちっとも驚きません。日本画的な曖昧なタッチと、ペン画のようなくっきりした線を、いいところ取りするように巧みに組み合わせたもので、当時の来日外国人に好まれ、海外流出した作品が多いらしいです。わたしは、とても気に入り、感銘を受けました。誰にでもわかるようなきれいな絵であるにもかかわらず、それに留まらないで、一瞬を切り取ったような静謐さがすばらしい。技術的なことはわたしにはわかりませんが、多数ある鳥の絵を見ても、技巧的に高いレヴェルにあることは察せられます。わたしがいちばん気に入ったのは花鳥画ですが、人物画も、女性など上品な色気があってよいものです。日本画をベースにしながら巧みに西洋を融合させて独自の境地に至ったもので、現在大家といわれている明治以降の日本画家も、これを見ると霞んでしまうものが少なくないのを感じます。
 展覧会は明日までという日に行ったせいか、コロナ禍にもかかわらず観客がたくさん来ていました。皆んなよく知っているなあ。このような一般に無名に近い画家の展覧会にこれほど人が来るのですから、すごいもんです。
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昼食は予定では美術館内のレストランで食べるつもりだったのですが、混雑して無理っぽかったので、カーナビで適当に近くの蕎麦屋手打ちそば みやかわ」を選びました。若い夫婦二人でやっている店で、待たされたのですがとてもおいしかったです。上品なそばがきが付いて出てきたのが、めずらしくてよかった。
 ひさしぶりに絵が見られて、思い切って行って満足です。それにしても、いつになったらコロナ禍が収束するんでしょうかね。家族で行こうといっているところは、他にもいろいろあるのですが。

日本画、もっと見たいですね。

夜。
■バッハのパルティータ第六番 BWV830 で、チェンバロは鈴木理賀(NML)。

ベートーヴェンの「遥かなる恋人に」 op.98 で、バリトンはディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ、ピアノはハルトムート・ヘル(NML)。

ベートーヴェン弦楽四重奏曲第三番 op.18-3 で、演奏はクァルテット・エクセルシオNMLCD)。日本のすばらしいカルテット。■シューマン交響曲第三番 op.97 で、指揮はヘルベルト・フォン・カラヤンベルリン・フィルハーモニー管弦楽団NML)。70年代のカラヤンなので、とにかくオーケストラの音が尋常でなく美しい。特に第一楽章は速めのテンポもあって、音の美しさで感動するほどだ。あとは、いつものイン・テンポとレガート。どの楽章もカラヤンらしいが、第四楽章が特にキマっていると思う。逆に、終楽章はザクザクとリズムを刻んでいくべき音楽なので、カラヤンのレガートではあまりうまくいっていない。いずれにせよ、カラヤンの才能は謎めいている。こんな音楽家は二度と出ないだろう。シューマンの「ダヴィット同盟舞曲集」 op.6 で、ピアノはエリック・ル・サージュ(NML)。初期シューマンピアノ曲の中でも、これはわたしの偏愛する曲で、ル・サージュのこの録音は、わたしの脳内に流れている演奏にもっとも近いもの。もしわたしがピアノが弾けていたら、こんな風に演奏したい。ル・サージュは、現代を代表するシューマン弾きだとわたしは思っている。