「俺ガイル」の修学旅行

雨。

昨晩「俺ガイル」のアニメ2期を半分くらい見たので、恥ずかしいが少しだけ書いておく。修学旅行から極度の鬱展開ですな。でも、だいぶこのアニメに惹かれてきた。比企谷(ひきがや)も雪ノ下も、ようやく深い気持ちが出てきたように思う。二人ともめんどうくさい性格で、特に比企谷は自意識過剰で人の(表面的な)気持ちをロジカルに分析していくのに異常に長けており、自分自身にも「深い」気持ちの存在などまったく認めていない。だから、修学旅行で他人のために、嘘の告白をしてわざとフラレるという、またああいう自爆的(かつ自虐的)行為をやってしまったのだろうな。しかし、それを見ていた雪ノ下が心底怒って、比企谷はショックだった。あそこから、二人とも自分の気持ちというものが自分でコントロールできるわけでないという当り前のことに、気付き始めたように思う。で、比企谷は自分でそれと気づかずに、ひねくれていたのが次第に他人にやさしくなっていく。それで、いろはとか、従来比企谷をコケにしていたようなまわりの女の子たちの態度が、ゆっくりと変わっていく。
 ネットには「俺ガイル」考察サイトがいろいろあって、将棋の手をロジカルに分析したような、心理劇の詳細な解剖が行われていて感心するとともに、それは心の「浅い」レヴェルの分析でしょうという違和感も強くあった。キャラクターの心のもっと「深い」レヴェルの動きは、ラノベの作者ですらコントロールできないもので、その意味で「俺ガイル」はよい小説(よいアニメ)なのだと思う。それにしても、修学旅行の前半はあんなにいい雰囲気だったのにな、比企谷と雪ノ下と先生と三人で、ラーメン食いに行くところとか、さらに二人でのその帰りとか。そのままラブコメしていれば、(退屈だが)ハッピーな話だったのに。実際は鬱展開へまっしぐらだったとは…。

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「あなたがそうでも、私は困るわ。その、こんな時間だし、一緒にいるの、見られると」
「うっ、そうか…」
「じゃあな」
「ええ、おやすみなさい。その…、送ってくれて、ありがとう」

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「あなたのやりかた、きらいだわ」
「うまく説明できなくて、もどかしいのだけれど、あなたのそのやりかた、とてもキライ」

 
「俺ガイル」はもちろんこの修学旅行が大きなターニングポイントになる筈で、その心理劇はたくさんのサイトでそれぞれ詳細に分析されている。つーか、何で雪ノ下はあんなに怒ったのか、そして以降二人の関係がギクシャクしてしまうのか、だよね。様々な説が出されていて、おもしろい。これは魅力的な問いなので、僕も(かなり恥ずかしいが)ちょっとだけ書いておきたい。僕の解釈も、一種の「嫉妬」説(それ自体はめずらしい説でない)なのだけれど、嫉妬といっても変な話である。だって、二人は付き合っているわけでもないし、お互い深いところで惹かれ合っているけれど共に恋愛初心者で、自分の恋心すら認めていないのだから(雪ノ下は、かなり怪しいが)。でも、アニメ1期で、比企谷が己を悪役にして、自虐的行為で雪ノ下を助けたのに、彼女が感動しなかった筈がないと思う。いつものごとくあまりにも屈折したやり方で、似たような性格の雪ノ下以外、誰にもわからなかったけれど。その自虐的行為はもちろん、比企谷が雪ノ下にやはり好意をもっていたからこそで、その気持ちは「本物」だったし、雪ノ下はそれにうっすらと気づいていた。
 でも、修学旅行での海老名への告白は全然ちがう。比企谷は海老名のことは特に何とも思っていないにもかかわらず、自虐的行為で海老名も、戸部、葉山たちも救ってしまう。それも、雪ノ下の目の前で。もうこれ以上書きたくないが、そりゃ雪ノ下は、怒りますよ。前に私にしてくれたことは、何だったのか、同じように安っぽいものなのか、と。だから、「嫉妬」とも何ともつかない、「うまく説明できなくて、もどかしい」激怒が、心の深いところから湧き上がってきたのだと思う。

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夜。
やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。続』最終話まで見る。
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第10話。
第8話でまさかあの比企谷が、雪ノ下と由比ヶ浜の前で泣くとは。でも、あとはもう平凡な、全然まちがっていない「青春ラブコメ」しか残っていない。楽しい三人組から、三角関係というやつで、どちらが選ばれるかももう明らか。それが3期のテーマだろうな。
 比企谷の泣きながらの「本物が欲しい」発言はどうなんだろ。本物の関係性が欲しいってことだろうが、汚れ切ったおっさんには正直言ってよくわからなかった。他の人間たちの薄っぺらな関係性は嫌だ、自分はちがうんだ、ってことで、もしかしたら葉山中心のなかよしグループみたいなのが念頭にあるのかも知れない。実際、馴れ合いはイヤということで、最終話は比企谷が「楽しい三人組」を壊してしまうことの選択で終わる。
 しかし、由比ヶ浜がちょっとかわいそうだな。比企谷と雪ノ下だけだったら絶対にうまくいかないところ、由比ヶ浜がいつも気を使って二人の仲が切れないようにしてあげるのに。でも、「わたしは全部欲しい、いまも、これからも」(楽しい三人組も、比企谷の心も欲しい)っていうけれど、それは無理というものだ。
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最終話。
青春したまえ、若人たちよ。さて、おっさんは寝る。