柿木伸之『ヴァルター・ベンヤミン』

曇。

午前中、甥っ子の勉強を見る。


「資本主義を変質させねば」というからには、資本主義は変っていないということか。いや、それはちがうともいえる。従来の軌道をどんどん進めているという点では、確かに変っていっている。しかし、従来からの方向はまったく変えていない。我々の考えねばならないのは、その方向を変えるということだ。資本主義の「変化」が我々を変化させている以上、我々の変化が資本主義を変化させねばならないということであろう。もはや「思想」を変えるしかないのだが、たぶんそれはほぼ絶望的にムリなわけだな。

ちと話の主語が大きすぎるわけだが。

ラグビーW杯、日本がアイルランドに劇的勝利。テレビを見ていて、すごかった。しかし、まさか勝つとは…。最後、はやく時計が進めと思ってしまったね。


柿木伸之『ヴァルター・ベンヤミン』読了。秀才の仕事。僕はベンヤミンの翻訳書はすべて文庫版でちょうど二十冊もっており、そのすべてに目を通しているが、いまだにまるでわからない(こういうのは読んだといわない)。本書もわたしの能力を超えている。アホは困りますなあ。
 なんかベンヤミンって読んでいるとカッコいいという雰囲気で、かつてはベンヤミン云々ってしょっちゅう言われていたし、うるさかったなあ。こちらに能力と教養がなさすぎて、ベンヤミンのどこがおもしろいのかいまひとつわかっていない。まあ複製芸術による「アウラの消滅」とか、そういう紋切り型のわかりやすい話はもちろん誰でもわかるけれど。それから、あの面倒な「パッサージュ論」まで邦訳さらに文庫化までされていて、目を通したのはいいのだけれど、結局何だったのだろうという感じ。さらには、『ゲーテの「親和力」』とか『ドイツ悲劇の根源』とか? そういや学生時代に東京の知人のところに泊めてもらっていて、岩波文庫の『暴力批判論』を読んでいたら、知人がげんこつを突きつけてきて、「批判してみろー」とか言っていたっけ。まあそんなこんなだから、本書はわたしには高級すぎますね。にゃお。

そうそう、ベンヤミンといやパウル・クレーの「新しい天使」だったね。本書もクレーから始まっている。で最後はピレネー山中で自殺したと。


NML で音楽を聴く。■モーツァルトオーボエ協奏曲 K.314 で、オーボエはランダル・ウォルフガング、オルフェウス室内管弦楽団NMLCD)。■ショパンのバラード第一番 op.23 で、ピアノは岩崎洵奈(NML)。何度も途中で聴き止めようと思ったのだが、結局最後まで聴いてしまった。いまの自分と相性がよいのかな?

ジェイ・セカンド ~バラード~

ジェイ・セカンド ~バラード~

ショパンのバラード第二番 op.38、第三番 op.47、第四番 op.52 で、ピアノは岩崎洵奈(NML)。岩崎洵奈のバラード全曲を聴いてみた。大満足。このピアニストがよいそれか自分にはまったくわからないのだが、少なくともこれはよい。じつに素直なバラードで、しかしポイントは的確に掴んでいる感じ。西洋人的な強い個性はないが、だからといってつまらないとは限らないのだ。これぞよい意味での日本人ピアニストの演奏だと思う。(追記。検索していたら、ショパン・コンクール(ディプロマ賞)でアルゲリッチに「自然で美しい演奏」と賞賛されたとか。アルゲリッチと全然ちがうタイプなのだが、さすがにアルゲリッチは広大だねえ。)■ブラームスのピアノ四重奏曲第三番 op.60 で、演奏はエリゼーン四重奏団(NMLCD)。