諏訪家族旅行(第一日)

以前から諏訪へ行こうと考えていたのだが、老母がネットで格安の宿を見つけたので、梅雨前に急遽実行することに。

八時前に出発。いつものごとく岐阜各務原IC から東海北陸自動車道に乗り、東海環状自動車道経由で中央自動車道へ。よい天気だ。中央道は二度目で、岐阜県から長野県へ抜ける恵那山トンネルが長い(8km 以上ある)。ほぼ一時間おきに恵那峡SA、駒ヶ岳SA で休憩しつつ、中央道伊北IC で高速を降りる。


辰野美術館へ。ここは辰野町町営のなかなか立派な美術館で、地元の美術家の作品を展示する他、特に我々のお目当ては地元で出土した縄文土器、縄文土偶である。上の写真(撮影可)を見てもらえればすぐにわかりますね。それほどたくさんの出土品が展示されているわけではないが、質が高く、見ごたえたっぷりであった。上の仮面土偶などは小さいながらとても魅力的で、(たぶん片腕が欠けているせいでもあろうか)特に国指定の文化財というわけではないのだけれど、どうですか、これ。他に展示されている縄文土器もすばらしく、縄文前期からのものなどがあって、しばし時間を忘れるほどだった。わたしは半ば本気で日本のピークは縄文時代ではないかと思っているのだが、その認識を新たにした。それにしても、何という遊び心にあふれた土器たち! わたしは、この土器を作っていた人たちはきっと半ば楽しんでいたと確信している。そしてそこから、縄文人たちの「精神性の豊かさ」(それ自体は陳腐な語句であるけれども)が垣間見えるような気がしてならない。

ふたたび中央道にに乗り、諏訪IC で降りる。もうお昼の時間なので、「おぎのや諏訪インター店」というドライブインにて昼食。ここのウリはいわゆる「峠の釜飯」で、かつては信越本線横川駅の駅弁として売られていたもの。いまは碓氷峠に列車は走ってはいないので、ここで食べられるというわけですね。特に期待していたわけではなかったけれど、思っていたよりもずっとおいしかったです。

茅野市の「尖石考古館」へ。ここのメインは何といっても国宝の二体の「ビーナス」たちである。尖石考古館は先ほどの辰野美術館よりも遥かに規模の大きな、縄文土器土偶に特化したミュージアムで、ここも見ごたえがあります。感想は、先ほどのを繰り返しておけばよいでしょう。すばらしい。

ここからは翌日も含め、諏訪大社を中心に巡ることになります。諏訪大社は全国に一万社もあるといわれる諏訪神社の総本社で、じつはわたしの地元のお宮さんも諏訪神社なのである。さて、諏訪大社といっても諏訪湖近辺に、全部で四社あるのを御存知であろうか。上社前宮、上社本宮、下社春宮、下社秋宮の四社である。祭神は建御名方神(たけみなかたのかみ)と八坂刀売神(やさかとめのかみ)で、前者の建御名方神が重要。わたしは日本の古代史に冥く、今度の旅行でだいぶお勉強をしたので超簡単に書いておくと、建御名方神というのは出雲大国主命(おおくにぬしのみこと)の息子であり、神話では「国譲り」で大和朝廷の神に出雲を追い出され、はるばる諏訪まで逃げてくる。そこで諏訪の土着の神(後述する)を征服して、この地に定住することになった。その建御名方神を祀ったのが諏訪大社ということですね。
 さて、それでまず訪れたのが上社本宮であり、それが上の写真である。よく知られていることだけれど、諏訪大社の四社すべての四方に「御柱」(おんばしら)という木の柱が立っていて、それを立てるお祭りは大変に有名です。上の写真にも左に御柱が見える。





神長官守矢史料館」へ*1。ここは今回の旅行でもっとも楽しみにしていたところで、藤森照信氏の設計に係る。守矢氏については、マイナーな話なのだが少しだけ蘊蓄(お勉強したやつ)を語りますね。上で、出雲を追い出された建御名方神が土着の神を征服したと書いたが、じつは土着の征服された方が守矢氏で、のちは代々(征服した方の)諏訪大社の神長官を務めることになった。これは古代史に属する話で、相当に古い話である。資料館内部のシカやイノシシ(儀式で使われた)の写真からわかるように、縄文系の狩猟採集民の文化を残してきているのだと思う。プリミティブなものなのは明らか。伝承は一子相伝で七十代以上続いたらしいが、明治維新で存続できなくなり、子孫の方が資料をまとめたものがここに展示されているものなのですね。資料館の方には大変に詳しいお話を聞かせて頂いて刺激的だった。老母がこのところ凝っているミシャグジ神の話も伺ったり。
 あとはこの近所にある、藤森照信氏設計の「茶室」なども見る。上に載せた三枚の写真がそれですね。とても楽しいものでした。それからここで、たぶん初めてカッコウの鳴き声を聞いた。ホントに「カッコウカッコウ」って鳴くのでまぎれがない。いろいろあって、この場所は楽しかったですね。

最後は上社前宮へ。ここが四社の中でもっとも古いという。

宿は諏訪湖畔の「親湯」。そもそもここに格安プランを見つけて決めた旅行でした。ま、お値段それなりなのだけれど、僕は充分満足でしたね。予後の老母にはよいサービスもあって、よろしかった。満足できる、長い一日でした。

*1:このHPも参考までに。