妹一家と谷汲へ

日曜日。好天。

午前中に妹一家来訪。皆んなで岐阜公園岐阜市歴史博物館へ行くつもりで出かける。天気はすばらしくよく、ということで皆考えることは同じ、駐車場がどこもことごとく「満」だった。なので、歴史博物館はあきらめる。で、どうしようかということで、老父の思いつきで谷汲へ行くことにする。谷汲には横蔵寺と華厳寺があって、子供たちに老父、「ミイラを見たことあるか」。
 谷汲は大垣の北 15km ほどであろうか、岐阜県の西濃地方に当たる。わたしの家からは西へ車で一時間ほどであるか。とにかくすばらしい好天で、選択した道はよく知らない、カーナビだよりであったが、富有柿の産地を抜け、一面の黄金色の田んぼの中を走り、細流の清らかさ、遠くには美濃の山々、紅葉にはまだ早いものの、すばらしい田舎の風景だった。揖斐川沿いも美しい。これだけでも満足というものである。

谷汲の横蔵寺に到着。かなりの山奥である。紅葉のシーズンはたくさんの観光客でにぎわうが、まださほどではなく、落ち着いて見ることができた。多少色づいてはいるし、五月でもないのに緑がとても美しい。苔むしたところもいかにも鄙びていて、甥っ子が「ジブリ」っぽいというのがおもしろかった。いまの子は、こういう風景から、ジブリのアニメを連想するのかという感じ。でも、甥っ子たちもスマホでしきりと写真を撮っていたり、興味がないわけでもないのだ。
 ここの御本尊は秘仏でふだんは見られない(かつて母と御開帳のとき訪れたことがある)。宝物殿には重文の仏像がいろいろあって、よいお顔の大日如来像など、なかなか悪くないものがある。木造深沙大将立像はいわゆる西遊記の「沙悟浄」なのであるが、ユニークなものだ。そしてここには、江戸時代の仏僧の「即身仏」がある。まああまり気持ちのよいものではないが、めずらしいものではあろう。子供たちは「一度見ればもういいな」と言っていたが、まさにそうですね。いずれにせよ、青い空と山の緑だけで充分だった。

お昼どきになったので、近くの道の駅「夢さんさん谷汲」に寄る。前の駐車場に停められないくらい人が来ていた。中華を食ったが、味はまあいわぬが花であろう。しかし、あとで食べた「五平餅」は、味噌にクルミか何か入っていて、香ばしくておいしかった。わからぬものである。ここものんびりしているところがいいね。
 

谷汲というともうひとつ、華厳寺がある。ここは西国三十三所観音霊場の最後、結願寺で有名であり、かつては大変な賑わいだったそうだ。僕の高校生の頃はまだここまで名鉄電車が来ていて、その終点であったが、いまではとうに廃止されている。で、訪れてみたところ、日曜日ということもあるのだろうが、かなりの人が出ていて、正直言って驚いた。長い長い参道も両側にリニューアルしたものから古びたものまで多くの店が並び、意外に賑わっている。参道はじつに立派で、本殿も風格があって、すっかり見直してしまった。皆んなでわいわい歩いて、楽しかったですね。子供たちは奥の院までいくといったが、さすがにそれはもろもろで無理だったけれど、元気だなあ。僕はすっかり疲れてしまって、もうマジでおっさんだ。

参道でおじいさんとおばあさんが炭火でひとつづつ焼いていた焼栗を買ってきたのだけれど、帰って皆んなで食ったらすごくおいしかった。まあ子供たちの好む味ではなかったが、たぶん何千年前の縄文人たちも同じように食っていた筈で、いや、香ばしくてうまいものでした。これは最高の山のものだね。ああもう、ホントに今日は楽しかった。いつも妹一家には幸せをおすそわけしてもらう。甥っ子たちにも幸あれと思わずにはいられなかった。