フランツ・キュモン『ミトラの密儀』

晴。いい天気だな。

NML で音楽を聴く。■バッハの無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第一番 BWV1001 で、ヴァイオリンはヒラリー・ハーンNML)。

Plays Bach: Violin Sonata

Plays Bach: Violin Sonata

ダウランドの「ラ・バターリャ」、ファンタジア 29、ファンタジア 41、前奏曲 15r、ファンタジア 67v、ファンシー、前奏曲 27r、ファンタジア 16r、ファンタジア 65v、ファンタジア 19、「シュザンヌはある日」、前奏曲 24v、「わが夫人の別れ」で、リュートはマイク・フェントロス(NMLCD)。素朴でなかなかいい。■平尾貴四男のフルート・ソナチネ上田真樹の「抒情小組曲」、「献呈」で、フルートは北川森央、ピアノは碓井俊樹(NMLCD)。何てことない曲たちなのだけれど、自分は日本人なのだなあと思う。■ブリテン無伴奏チェロ組曲第二番 op.80 で、チェロはアレクサンドル・ラム(NMLCD)。ブリテンは好ましい。

■バッハのフランス組曲第四番 BWV815、第二番 BWV813、第三番 BWV814 で、ピアノは岡田美和(NMLCD)。この岡田美和のフランス組曲はどこか好ましいのだよなあ。そんなにすごい演奏というわけではないけれども、これまでよく聴いてきた。まさにこの曲集の僕のイメージに近い演奏なのである。■ブラームスのピアノ協奏曲第二番 op.83 で、ピアノはスティーヴン・コヴァセヴィチ、ヴォルフガング・サヴァリッシュ指揮、ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団NMLCD)。ピアノとオーケストラが渾然一体となった深い名演。コヴァセヴィチのピアノはすばらしい深さをもっていて、カッコいいブラームスだ。サヴァリッシュの指揮もこの曲にふさわしいよい出来。サヴァリッシュというのはこんなによい指揮者だったのだな。これまで聴いたこの曲の演奏のなかでも、特筆すべきそれであると思う。

グールドはコヴァセヴィチに演奏会で弾くことを止めるように忠告したということだが、グールドは何を感じていたのだろうね。もちろんよいピアニストだと思っていたからこそ、そんなことを言ったのだろう。コヴァセヴィチは男性的なというか、男らしいピアノを弾くひとだと思う。印象的な深さをもっていて、もはやいまではこのような音楽家はほとんどいない。

曇った。寒くなってきたなあ。
ガソリンスタンドで給油。いまガソリン高いのだね。


フランツ・キュモン『ミトラの密儀』読了。小川英雄訳。文庫版解説によれば、キュモンは十九世紀から二十世紀始めに活躍した宗教史家、古典学者で、そのミスラ(ミトラ)研究はとても有名なものらしい。本書もいまや古典的な位置づけにある学術書であるという。ミスラ教は古代ペルシアの宗教で、かつてはローマ帝国においてキリスト教と派を争った有力な宗教であったために、西洋の本を読んでいるとよく出てくる。「背教者」ユリアヌス帝が信仰したことでも知られていよう。自分はさほどの知識がなかったので、本書はなかなかおもしろく読んだ。何ゆえミスラ教が衰退し、キリスト教が勝利したかという理由は、結構な難問であるようで、本書でもはっきりした答えは書いていない。それから、ミスラ教にはキリスト教の「聖書」に当たる存在がない。というか、今日まで文献がきわめて少ないようだ。なので、それほどまでに有力であったのに、後世ではその教義すらおぼろげであるということになっている。まあそんなだ。本書は大著から結論部を転用増補したもので、一般人が読んでもおもしろく読める本になっていると思う。

ミトラの密儀 (ちくま学芸文庫)

ミトラの密儀 (ちくま学芸文庫)