足立巻一『やちまた(上)』

休日(春分の日)。晴。のち曇。

別宮貞雄ヴィオラ協奏曲(1971)で、ヴィオラ今井信子、指揮は若杉弘NHK交響楽団。めっちゃおもしろい。日本人作曲家というのは世界的に見れば大したことはないのかも知れないが、自分が日本人のせいなのかも知れないけれど、聴いていてまずはおもしろい。この曲だって、シリアスで直球勝負で、じつにマジメに書いているところが何とも気持ちがよいではないか。じつのところ、そんなに底が浅いとは思えないのだけれど。

林光交響曲第二番「さまざまな歌」(1985)で、ピアノは高橋悠治、指揮は尾高忠明東京フィルハーモニー交響楽団。何だかまとまりがない曲だが、これもおもしろい。終楽章のショスタコーヴィチ風、不思議な感じ。ホント、日本人作曲家おもしろすぎる。てな風に日本人作曲家ってひと括りにしてはいけないのかも知れないが、どこか共通のおもしろさがあるような気がする。でも、まだわからない。それから、高橋悠治のピアノは世界レヴェル。

モーツァルトのピアノ四重奏曲第二番 K.493 で、演奏はクリスティアン・ツァハリアス、フランク・ペーター・ツィンマーマン他。好演。

フランクの交響曲ニ短調で、指揮はクルト・マズア。うーん、マズアはまだよくわからないのだが、相当の人であることはわかった。ただこの曲、ここで聴かれるよりもっと深いと思うのだけれど。ニューヨーク・フィルは全然すごいとは思わない。

足立巻一『やちまた(上)』読了。読み出したら惹き込まれて、昼から夜中近くまで読んでいた。愛読するブログで教えられた本である。著者のことは何も知らないが、こんな本があったのだな。本居宣長の息子春庭の「伝記」であるのだが、ただの伝記ではない。著者は学生のときに春庭に文字通り取り憑かれ、膨大な年月をかけてその生涯を追求する様が、著者の自伝としても活写されているのだ。本居春庭は若くして視力を失ったが、父宣長の学を受け継ぎ、日本語の文法の解明に画期的な一段階をもたらした学者である。そのことは本書を読んで初めて知った。本書では若い著者が春庭を延々と追っていく様子が生き生きと語られ、伝記であると同時にまたすぐれた文学にもなっている。とにかくおもしろい。続けて下巻も読む。

近年どうしようもない文庫レーベルに落魄している中公文庫であるが、本書はかつての中公文庫にふさわしいような本である。もう一度いうが、こんな本があったのだな。(PM23:44)

ようやくウチの梅が咲き出した。ウチのはじつに遅い。もう桜が咲くと言っているのに。

散歩していて見かけたスイセン