映画館で『探偵は BAR にいる 3』を / 松家仁之『優雅なのかどうか、わからない』

曇。時雨れている。


イオンシネマ各務原にて『探偵は BAR にいる 3』を観てきました。早朝割引がきくというので、朝一です。お客さんは10人も入っていなかったのですが、いや、期待は裏切られませんでしたね。僕の好きな冗談ぽくもチープな作りのハードボイルドで、もちろん松田優作へのオマージュでもあり、大泉洋松田龍平のコンビがいつものごとく札幌の街を舞台に活躍します。メインのドラマはこれまたいつものごとく悲しいお話で、しかしセンチメンタルな部分を吹っ切っていくのがハードボイルドのドラマトゥルギーですね。ドラマの中心的な存在は北川景子で、彼女が軸になって話が展開します。北川景子はまずまずという感じでしたが、むずかしい役をよくやってはいたものの、本作の弱点(といったらいいすぎでしょうが)は彼女かも知れません。振幅の大きい役なので、ヒールとしてもヒロインとしてもむずかしかったですね。美人だけれども役にしては多少子供っぽい感じ。まあ、僕などのいうことなので信用できませんが。探偵(大泉洋)と相棒の高田(松田龍平)は安定した期待どおりで、毎回見せるアクションもよかった。このコンビ、本当にいいわ。是非本作がヒットして、シリーズがさらに続くことを希望します。ラストも納得できる感じで、ふつうにエンタメとして観て、裏切られることはないんじゃないかと思います。

しかし映画館に入ったのはひさしぶり。もしかしたらこれの前作以来かも。映画館では上映前の宣伝からずっと観ていたのですが、予告を見てもあまり観たいような映画はなかったですね。また当分映画館には行かないだろうな。

なお、イベントシーンで日ハムの栗山監督がトークショーという役どころで出ていたりとか、チョイ役(かな?)の前田敦子がじつに天然にバカっぽい女子大生役でなんじゃこれとか(演技までヘタな感じだったのがおもしろい。でも、じつは天然バカじゃなかったという話になっているのです)、遊びっぽいところも色いろありました。しかし、すすきのっていうのは雰囲気あるなあ。冬の北海道というのも何ともいえないよさがあって、映画の魅力になっていると思います。

追記。上を書いたあと色いろ検索していて知ったのですが、この作品はちゃんとエンドロールの最後まで見ないといけなかったようです。やー、見そこねた。ネタバレ氏などのブログでわかったのですが、ああ、そういうことだったのかと。もちろんメインの話には関係ないのですが、気になっていたモヤモヤが晴れました。じつは予感がしてエンドロールの途中で出ようか迷い、出かかった通路でもまだスクリーンを見ていたのですが、結局出てしまいました。本作を見られる方はきっとエンドロールの最後まで見た方がよいようです。

図書館から借りてきた、松家仁之『優雅なのかどうか、わからない』読了。離婚した中年男性が主人公の、おしゃれで良質の恋愛小説である。ターゲットはあきらかに女性だが、どれくらいの年齢層を対象にしたものか。この小説家の特徴である、きれいな文章が印象的だ。個人的なことだが、このような小説を読んでいると、自分に人生はないというか、許されていなかったような気がする。また、他人の人生に対して、それほどの興味もないのかも知れない。まあ、ただの独身中年ひきこもりニートなのですけれど。主人公は都内の出版社で働く編集者であり、四〇半ばで離婚した直後、数年前まで不倫相手だったすてきな女性と偶然再会する。そして、都内にあるどっしりした古い家を購入し、自分の好みにリフォームしつつ、ふたたびそのすてきな女性と恋愛する。最後は、ふたりが結婚するかは微妙な感じだが、主人公の気持ちはそちらへかたまってゆく。まあそんな小説だ。なんつーか、自分に何の関係があるかというような感じであるが、そこそこ楽しく読めたことは読めた。シャレオツな人にすすめたい。

優雅なのかどうか、わからない

優雅なのかどうか、わからない

なお、本書では「家」というものが大きな役割を果たしている。著者のデビュー作である『火山のふもとで』も、建築事務所での話だった。何かそういう志向でも著者にあるのだろうか。まあ、あまり自分に合った作家ではなさそうであるが。またこの表紙は何なのかね。