テオクリトス『牧歌』

雨。


アルヴォ・ペルトの「Vier Leichte Tanzstücke」で、ピアノはイェローン・ヴァン・ヴェーン。


バルトークのヴァイオリン協奏曲第一番+アンコールで、ヴァイオリンは諏訪内晶子、指揮はイヴァン・フィッシャー。

昼から仕事。

図書館から借りてきた、テオクリトス『牧歌』読了。古澤ゆう子訳。後世引用されて知っている詩句が結構あった。それから、また澁澤龍彦晩年のエッセイを思い出した。『サド侯爵 あるいは城と牢獄』の中に「呉茂一さんの翻訳について」という題の短いエッセイがあって、そこにテオクリトスの「まじないをする女、シマイタ」一篇について書かれている。この詩には十回繰り返される呪文があるのだが、これは恋を成就させるための呪文なのだった。呉茂一によるその訳を澁澤から孫引きしておこう。「ありすい車、くるくると手繰り寄せろよ、あの男を、わたしの家へ」。軽妙な訳で、今回読んだ学術的な訳書では、さすがにこのようなものではない。この「ありすい車」(ユンクス)についても、澁澤龍彦は別のエッセイでこれを考証している。澁澤というのは、じつにおもしろい人だったな。

テオクリトス 牧歌 (西洋古典叢書)

テオクリトス 牧歌 (西洋古典叢書)

サド侯爵 あるいは城と牢獄 (河出文庫)

サド侯爵 あるいは城と牢獄 (河出文庫)

呉茂一さんは西洋古典学の往年の大先生で、自分などは呼び捨てにするのはとても気が引けるのだが、流れでこうなってしまった。昔の岩波文庫ホメロスは呉茂一先生の訳で読めたのだけれど、岩波文庫はいまでは新訳に替えてしまっている。澁澤のいうとおり、呉先生の「趣味的な」翻訳は、好まない人が多かったのだろう。そうだな、呉先生による古典詩の翻訳でも読んで寝るか。
ギリシア・ローマ抒情詩選―花冠 (岩波文庫)

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