毛利嘉孝『増補 ポピュラー音楽と資本主義』/上野健爾『代数幾何入門』

晴。
図書館から借りてきた、毛利嘉孝『増補 ポピュラー音楽と資本主義』読了。「増補」ということは元本があるわけで、まったく知らなかった。同時代人の書いたものでは、このところ読んだ最も知的な本だった。「知的」といっても色いろあるわけだが、まずはアドルノと真っ向対峙しようとしているところ。これは誰にでもできることではなく、ほとほと感心させられた。なんていうとちょっと上から目線っぽいが、もちろん自分などには到底ムリもムリ、他の秀才たちにもまずはむずかしそうである。それを高いレヴェルで行っているところがすごく、また誠実でもある。また、そもそも実際のポピュラー音楽の享受も年季と気合が入っている感じだが、これは自分の判断できることではなくて残念である。なんて書いていて嫌になってくる、もう少し上手く書けないものか。頭をフルに使うことと著者の音楽への愛を感ずることで、濃密な読書体験を享受できたのが稀有なことだった。著者はこれを教科書として書いたそうであるが、このような教科書で学べる学生は幸福である。以上、まったく何も書いていないに等しいが、音楽が好きな方にはまちがいなくお勧めできる、いい本だ。こういう本が売れるといいな。

ポピュラー音楽と資本主義

ポピュラー音楽と資本主義

気のせいか、硬派な文体に多少悲しみの色が混じっているかのような。まあしかし、人間のしでかすことなど所詮大したことはないのである。悪くて、人類が滅亡するくらいのことではあるまいか。
なんとこの「増補」版、第1刷から4年が経ってから増刷されたのだな。せりか書房、えらいですね。で、その増刷がまた何故かこんな田舎の図書館に入ったと。不思議だなあ。

図書館から借りてきた、上野健爾『代数幾何入門』にざっと目を通す。返す前に覗いておいた。こういう無謀なやり方は勧めないが、独習者は已むを得ない。それにまあ、自分はこういうのは嫌いでないので。何にもわからないですよ。
代数幾何入門

代数幾何入門