小林雅一『ゲノム編集とは何か』

晴。
昨晩は明け方までこれを書いていた。関数型プログラミングの初歩だが、これ実際に Ruby で弄ってみるとおもしろくて、なかなか止められなかった。ついでに LambdaDriver で遊んでみたりとか。まだよくわからないのは、Ruby関数型言語ではないので、どういう場合に遅延評価されるのか、また遅延評価したくなったら一般的な処方箋はあるのかということである。Ruby の proc あるいは lambda はファーストクラスだが、ラムダ式そのものではない。厳密にラムダ計算をやろうと思ったら、『アンダースタンディング コンピュテーション ―単純な機械から不可能なプログラムまで』でやっているように言語処理系を作らないといけないので、Ruby だからどうとかはあまり関係がなくなってしまう。いや、まだまだよくわかっていませんが。

小林雅一『ゲノム編集とは何か』読了。副題「『DNAのメス』クリスパーの衝撃」。著者は先日読んだ『AIの衝撃』の著者でもある。両者とも「衝撃」を謳っていて、センセーショナルなのが共通点だ。クリスパーとはDNAをかなり正確な位置で切断できるタンパク質である。本書に拠れば、クリスパーによって従来はむずかしかった、自由なDNA配列の合成が可能になるという。その技術により、将来は人間の寿命を大幅に伸ばしたり、生殖細胞のDNAを編集することで、頭のよい美男美女の子供を産むことが可能になるかも知れないという。しかし、本書から判断するに、クリスパーによるDNA編集はごく最近の技術であり、まだ海のものとも山のものともわからない部分も大きいのではないだろうか。本当に自在にゲノムが編集できるようになるかは、確実ではないように思われる。で、著者はこんなことを書いている。「労働力の構造的な減少を補う、もう一つのやり方は、AIやロボットのような外部の力に頼るというより、むしろ人類全体を遺伝子レヴェルで強化することによって、社会全体の生産性を上げることだ。」(p.245、強調は引用者)マジですか? 僕はこういうことを言うやつは、いかに売れんがためとは言え、バカだと思う。著者は東京大学理学部物理学科出身の秀才であるが、こういう人たちはホントに困る。せっかくかしこいのだから、もう少しマジメにやって欲しい。まあ、クリスパーがたしかにすごそうなのはわかるのですけれどね。ただ、技術的なバックグラウンドは本書だけでははっきりしないし、それは僕の頭が悪いせいだけではないと思う。著者はこの技術は高校生にも理解できるくらい容易であると強調する一方、このままでは日本は出遅れるとか述べているが、そんなに容易な技術ならキャッチアップもまた容易でしょう。どうもよくわからないのだよね。ま、とにかくクリスパー、頭にインプットしておきました。


アメリカ次期大統領はトランプかあ。特に言いたいことはないけれど、スタッフの人選には注目している。いま取り沙汰されているのはジュリアーニとかギングリッチからしく、じつにイヤな感じ。スタッフとして賢明な人物がまわりを固めるのを祈っている。そうでなければ、大変なことになるかも知れない。とにかく、政治のことも経済のことも世界のことも何にも知らないただの金持ちのおっさんが大統領になるのだから。
極東ブログ」を読むと、トランプは「口にする単純明快な言葉より、はるかに複雑な男」らしい。それならその方がもちろんいい。無知なおっさんよりも、はるかに。単純な奴が政治をやると、ロクなことがない。複雑な奴が政治をやると、平凡な政治になるのだと思う。