池内恵『サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』

晴。
音楽を聴く。■バッハ:2声のインヴェンション全曲 BWV772-786(アンジェラ・ヒューイット参照)。失望。ヒューイットはインヴェンションが全然わかっていない。フランス組曲ではグールドにおさおさ劣るものではないと思っていたのだが、ここではまだまだだ。インヴェンション(とシンフォニア)はバッハが息子の教育用に書いたもので、いまでもピアノの初学者のための教材になっているが、決して音楽的にはやさしくないことが、ここでもわかる。■モーツァルト:ピアノ四重奏曲ト短調 K.478 (メニューイン・フェスティバル・ピアノ四重奏団、参照)。終楽章が好きだ。
昼過ぎ、カルコス。このところちっともお金を使わないので多少買おうと思っていたのだが、結局大して買えなかった。気になる本がないのではないけれど、ふんぎれなかったな。そうそう、プログラミング本ではアルゴリズム関係が最近面白く思われるので探したが、よくわからないのが1冊あったきり。アルゴリズム本って、基本でしょ? 皆んな買わないの?

西恵利香を聴く。
うーん、どう書こうか困る。経済学者でアイドル評論家(?)の田中秀臣先生のブログ記事に触発されて聴いてみたのだが、なんつーか、こういうのはおっさんにわからんのが本当じゃないの? どこがわからないのか困惑した。単に保守的な音楽にしか自分には聴こえない。田中先生は、「時代を伝える匂いを持った歌い手」と仰っているが、こんなのがいまの時代なの? 何か挑戦しているの? まあアイドルなんだから、音楽がどうとか言うのがおかしいのかも知れないが、宇多丸って人(よく知らない)まで評価しているのでしょう? 自分には安易すぎる音楽にしか聴こえない。こっちがおかしいのか。気分を悪くされた方はお許しを。

LISTEN UP

LISTEN UP

ちゃんと音楽がわかる人がアイドルやアニソンをしっかり聴いて、論評することは必須だと感じる。誰かすごい人、お願いします。(よく考えたら、それは誰も喜ばない仕事だよなあ…。)
いらぬことを書くと、まだ初音ミクの方がマシじゃね? ごめんなさい。
しかしやはりと云うべきか、いまは本当にポストモダンの時代なのだなあ。こういう時には痛感させられる。

池内恵『サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』読了。本書では優秀な専門家によって、現在の中東情勢を理解するための歴史的背景が詳細に語られる。中東の現在の混乱は単に「サイクス=ピコ協定が悪い」と言っても始まらないということで、露土戦争のあたりからオスマン帝国の解体、第一次世界大戦におけるアラブなどが中心の話題だ。結局、民族が複雑に入り混じっているから、国境線を「正しく」引くというのは、殆ど不可能なくらいの難事であることがわかる。そして、無理な国境線を何とか保ってきたのは(程度の差はあれ)強権的な国家たちであったのだが、「アラブの春」でそれもゆらいでしまった(ところで、著者の「アラブの春」へのスタンスは非常にわかりにくい。本書の中で明言しているところは皆無だと思う)。それがきっかけになっていまの中東の大混迷があるという筋書きである。
 それにしても歴史があまりにも複雑に入り組んでいて、明快な語り口が身上の著者でも、自分にはしんどいところがたくさんあった。皆さんは大丈夫だろうと思うが、自分は到底細部まで把握しきれていない。著者は特にどの立場を取るということもなく、どれもこれも一理はあるという論調で、結局自分などには何が究極的に問題であるのか、では我々がどうしたらよいのかということはさらにわからなくなってしまった。それくらい、複雑なことになっているそうである。薄い本なのだが、ああ、しんどかった。なお、本書はブックレット的に随時刊行がなされる第一冊目だという。続刊が出たら、まあ買うしかないだろうなあ。
【中東大混迷を解く】 サイクス=ピコ協定 百年の呪縛 (新潮選書)

【中東大混迷を解く】 サイクス=ピコ協定 百年の呪縛 (新潮選書)

しかし、アメリカとロシア(それからヨーロッパ各国、中国、もちろん日本)が一切中東に介入しないというのは、これはそもそもあり得ないことであるが、仮にそうしてすべてを現地の人々に委ねるというのは、これは無責任なことなのだろうか。その方が死者は少なくて済むということは、ないのだろうか。バカな素人の妄想であろうか。