岩波文庫版『山之口獏詩集』

曇。
音楽を聴く。■バッハ:パルティータ第一番 BWV825、第五番 BWV829(バーナード・ロバーツ)。うーん、いまひとつ。僕の好きなピアノによるバッハなのだが。

Complete Partitas Bwv 825-8

Complete Partitas Bwv 825-8


世界が急速に「トランプ化」「IS化」してきているように感じる。以前なら誰でもおかしい、変だと考えられていた不寛容が、世界的に当り前のことになりつつある。これは、世界の「常識」が変わってきているのだろうか。特に弱者、マイノリティが標的になっている。今度の神奈川の障害者大量殺人も、じつに幼稚で悪質な動機であり、この流れの中にあるようにも見える。しかし、これが「自爆テロ」ほどの大義もなにもないのは驚くべきだ。日本においてゆえなのだろうか。いずれにせよ、あるブログ友達の近所で起きたので気になっていたが、彼は直接は関係なかったようで一応はよかったけれど、しかしこのような流れに無関係な人間はあり得ない。いまや我々は、どうしたものか、自分程度の者にはまったく対処が考えられないような、袋小路に陥っている。不寛容こそが新たな「常識」になるのか。寛容は不寛容に対して無力である。これは渡辺一夫の直面したアポリアでもあった。渡辺一夫には、「寛容(トレランス)は自らを守るために不寛容(アントレランス)に対して不寛容(アントレラン)になるべきか」という小文がある。
狂気について―渡辺一夫評論選 (岩波文庫)

狂気について―渡辺一夫評論選 (岩波文庫)

この小文を読み返してみたが、渡辺一夫の言っていることは(予想どおり)甚だ微温的なもので、特に参考にはならなかった。渡辺は「寛容は不寛容になってはいけない」と主張し、「利害打算」からしても人間を信じるそうであるが、いまや不寛容は精密な「利害打算」によって遂行されている面があるのだ。トランプや IS は不寛容が戦略上はなはだ有効であることを発見したのである。ここが現象の新しいといえば新しい側面である。つまり、まことにむずかしいことになっている。考えていると嫌になってくる感じだ。
 ひとつ付記しておけば、これにはメディアによって増幅された「大衆」の問題があるだろう。我々大衆のある種の「不満」が、この流れを作り出している。このような「不満」自体は新しいものではないが、上手く言えないけれども、その表れ方にはどこか新しさがあるのを感じる。これは例えば、過去のヒトラーの台頭などとは同じではないような気がする。紋切り型の言い分ではあるが、現在の「経済のグローバル化」とも恐らく関係があることだろう。
 なお、最近では「格差」そのものは経済学的にも必ずしも不合理ではないとされ、いまやむしろ「格差」を積極的に肯定すらする論調もめずらしくないが、その主に経済的な格差の増大が新たな「階級」の区別を生み出し、社会を不安定化していることは、紋切り型ではあるが指摘しておかねばなるまい。新たな「上流階級」は、不安定化した社会でルサンチマンの標的になることに対し、ゲーテッドコミュニティ化し、また強い「監視社会」「管理社会」を現在進行形で構築しつつある。そのうち、新たな階級対立が確実に起こるであろうし、「トランプ現象」などはまさしくその現れのひとつでもある。であるから、トランプなどはいまはわけのわからない野蛮人のように見えても、将来「革命家」として認識されるようなことがないとは言えないのだ。驚くべきことに。
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デュアルブートする際は、メインのブートローダーはMBR(例えば /deb/sda)にインストールし、追加した OS のブートローダーはそのパーティションの先頭(例えば /dev/sda3)に入れる。で、Grub Customizer で編集するか、Boot Repair で修復する。

岩波文庫版『山之口獏詩集』読了。優れた詩人であることは疑いない。深刻な生活を歌っても、軽みと余裕とあたたかみのある詩。山之口獏の詩は徹底して推敲されているそうだ。そのせいか、年代が進んでも発展と呼べるようなもの、年代的な多様性などはあまり見られない。どれも似たような印象が与えられる。山之口獏はアルチザン、職人的な詩人と云うべきであろう。その詩は、貧乏を歌い、結婚を歌い、子供を歌っても、優れた工芸品のような感じがする。
山之口貘詩集 (岩波文庫)

山之口貘詩集 (岩波文庫)

山之口獏は初めて読んだが、これを岩波文庫に入れたというのは英断だった。このところの岩波文庫は日本の現代詩に力を入れているが、じつにありがたい。この試みはさらに応援していきたいと思う。