カーソン・マッカラーズ『結婚式のメンバー』

晴。
すべて最初からやり直しだな。対称性だけだと行き詰まってしまう。ズレが必要。
音楽を聴く。■モーツァルト:ピアノ協奏曲第二十二番 K.482(ペライア参照)。■ハイドン:ピアノ・ソナタ第二十番 (ブレンデル参照)。■■フリードリヒ・カルクブレンナー:六重奏曲 op.58 (リノス・アンサンブル、コンスタンツェ・アイクホルスト )。これは拾い物。親しみやすい室内楽を求めておられる方にはお勧めできる。演奏もなかなかいい。

フリードリヒ・カルクブレンナー:室内楽作品集

フリードリヒ・カルクブレンナー:室内楽作品集

  • アーティスト: リノス・アンサンブル,フリードリヒ・カルクブレンナー
  • 出版社/メーカー: cpo
  • 発売日: 2014/11/26
  • メディア: CD
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シューベルト即興曲集 op.90 D899(アラウ、参照)。素晴らしいシューベルト演奏。さすがはアラウだ。高音域のピアノの音の美しいことと云ったら。■スクリャービン:練習曲 op.42, op.65 全曲 (ニキタ・マガロフ参照)。op.42-5 など、ロマンティシズムの極致。胸が締め付けられるよう。

昼から県営プール。いい天気。
カーソン・マッカラーズ『結婚式のメンバー』読了。村上春樹訳。なるほど、傑作である。傑作であると云わざるを得ない。しかし、個人的なことだが、僕は小説(あるいは文学)がわからないとも云わざるを得ない。正直言って、本書を読んでいてウンザリさせられどおしだった。僕にももちろん小学生の時はあったのだが、何でいまさら小学生の女の子の「春の目覚め」を、徹底した完璧な描写で読まなくてはならないのか。僕には、フランキーに感情移入することはむずかしかった。自分を顧みて、いったい小学生の頃、自分は何を考えて日々過ごしていたのか、既に茫漠とした霧の彼方である。そう、自分もまたボードレール(だったよね?)のように、ここでなければどこへでもと思っていたのだろうか。
 まあ小説のキャラクターとして、フランキー(乃至はジャスミン、乃至はフランシス)は非常にくっきりとした造形であることは認めよう。しかし本書で自分にいちばん印象的だったのは、黒人家政婦のベレニスの存在である。恐らくベレニスは高い教育など受けてはいないが、彼女がフランキーに投げつける言葉を読んでいると、ふつうの人間が当り前に「叡智」をもっていることに気づかせられる。彼女の言葉こそ、まさしく神託のように響く。フランキーなどは、その手の中で踊っているだけのことである。
 マッカラーズという人は初めて読んだが、なるほど本書はたいへんに心理的な掘削力がある。機会があったら是非『心は孤独な狩人』なども読んでみたいものだ。
結婚式のメンバー (新潮文庫)

結婚式のメンバー (新潮文庫)

しかしいつもながら、「人生」はもういいという気がする。どうして皆んな「人生」について語りたがるのか。人生など、生まれてきて、苦しんで、死ぬだけのことではないか。それだからこそ、「喜び」や「笑い」が貴重なのではないのか。

段々日本人の人心が殺伐としてきたのを感ずる。民衆に知恵がなくなってきたという印象だ。頭はどんどんよくなっているのに。
僕は今の子供たちについて多少は知っていると思っているが、彼ら彼女らにはそれほど期待していない。ちょうどその親たちが自分の世代なのだが、その親たちも親たちだ。将来日本が沈没しなければ、その方が驚きであると思う。まあだからと云って、どうということもないのだが。積極的に未来を悲観したりするつもりはない。