秋月龍萊『道元禅師の「典座教訓」を読む』/福永文夫『日本占領史 1945-1952』

日曜日。曇。
飛んでもなく眠った。本を読みながら寝てしまったのだが、結局十二時間くらい寝たのではないか。それも、長い、変な続きの夢を延々と見た。いま思い出そうとしてもあまり思い出せないが、とにかく変な夢。何なんだ、いったい。
音楽を聴く。■バルトーク:ヴァイオリン協奏曲第二番 Sz.112 (チョン・キョンファ、ラトル、参照)。出だしからワクワクさせられる。バルトークを聴いていると、二十世紀音楽の豊饒さが痛感される。もっともっと聴かねばなるまい。特に、シェーンベルクバルトークは当り前にならないといけない。チョン・キョンファはマジで最高。■ヒンデミット:ヴァイオリン・ソナタ ニ長調 op.11-2 (ベッカー=ベンダー、ナジ、参照)。
図書館。
2015年秋・冬_60
秋月龍萊『道元禅師の「典座教訓」を読む』読了。ありがたい書物。我々凡夫はまず本物を読むべきだと思う。秋月老師の本は、もっと文庫化して欲しいな。

道元禅師の『典座教訓』を読む (ちくま学芸文庫)

道元禅師の『典座教訓』を読む (ちくま学芸文庫)

福永文夫『日本占領史 1945-1952』読了。第一印象としては、年表を縦書にした、退屈な歴史書というものである。史観というものが見られないというか、たぶん歴史家は年表を書いていればよいというような史観なのか。それに、特に日本の悪いところばかり書く必要はないけれど、本書のように日本に都合の悪いことが殆ど書かれていないというのも、どうも不思議な感じである。別に無謬な国家なんてないと思うのだが。また、本書は沖縄の記述を特に設けたということで、それは大変によい試みであると思うが、なかなかこれだけではわからない。もう少し踏み込んだ記述が欲しかった。などと書いたが、もちろん自分はこのあたりの時代に無知であり、研究の状況についても無知なので、たんに素人の印象にすぎない。年表的な知識すら乏しいので、その意味では役に立つ本であったとも云えるだろう。その上で敢えて言うが、本書は天皇に関する記述が殆どない。自分の知るところでは、昭和天皇は若い頃から、相当積極的に政治に介入している。それは、敗戦後でも変わることはなかった筈だ。本書の著者がそれを知らない筈はないから、何故にそれを書かなかったかである。そのあたりは非常に気になる。朝鮮戦争あたりの記述は、自分のあまりの無知もあってかなり参考になった。しかし、(旧)日米安保条約に関する記述は殆どなく、これでは何もわからない。以上、かなり不満を覚えた読書になった。昭和史に関しては引き続きいろいろ読んでみたい。なお、優れた読み手として定評がある山下ゆさんは本書を高く評価されているので(参照)、ここよりもむしろそちらを読まれた方がいいと思う。
D・H・ロレンスを読む。至極おもしろい。

SHADE さんに教えてもらった Shing02You Tube で聴く。一時間半ほど聴いたが、最後に聴いた「日本国憲法」がぶっ飛んでいて非常におもしろかった。日本国憲法が如何にして成立したのか、いや、どのような経緯でどのような思想が日本国憲法に流れ込んだのか、マグナカルタから始め、20分あまりをかけてラップで近代史を総まくりするという、驚くべき力技である。もちろん素晴らしく勉強されたのがわかるし、ヒップホップという、書物とも映画ともドキュメンタリーともちがう手法でなされた、一大スペクタクルになっている。これは刺激的な試みだ。確かに音楽としてラディカルとは云えないかも知れないが、こういう精神こそがラディカルなのである。ただ、この人の他の曲と比べ、You Tube の視聴数が一桁乃至二桁低いのは残念だ。
 それ以外の曲も得るところがあった。この人のいちばんの宝は、その声の質だと思う。ラップ特有の吐き出すようなしゃべり方ではあるが、声の質がどことなくメロウで、とても気持ちがいい。また、曲のノイズの質もよい。全体として、抒情性みたいなものを纏っているのが特徴である。ただ以上のことは、音楽として聴きやすいということで、インパクトで勝負するラッパーとしては、もしかしたら必ずしも利点とばかりは云えないのかも知れない。そこは自分にはわからない。とにかく、これはアルバムを聴いてみてもいいなと思った。いい音楽家を紹介して頂きました。(AM0:59)