こともなし

曇。
音楽を聴く。■モーツァルト交響曲第四十一番 K.551 (ガーディナー参照)。これは大変な名演だ。この曲はもちろんモーツァルトの傑作のひとつというだけでなく、クラシック音楽の名曲の中でも特別な曲のひとつであるが、その演奏史に残るものと云えるだろう。ガーディナーのスタイルは現代的なものであり、自分の個性を主張するというよりは、曲そのものに語らせるタイプのそれであると思う。実際、ブラインド(?)・テストをしてみたら、自分はガーディナーの演奏とはわからないかも知れない、それほどクセのない演奏であるが、ここまでくると、音楽が自発的に鳴っているような感覚にすらなる。ピリオド楽器もまったく違和感がない、というか、これ以外には考えられないほどである。今風のスタイルとして、模範的な達成だと云うべきだろう。まったく素晴らしかった。■ドビュッシー管弦楽のための「映像」(ブーレーズ参照)。これまた何とも精緻で、色彩感の豊かな演奏であることか! 別にクリーブランド管を侮っていたわけではないが、ちょっと信じられない美しさである。塵ひとつないクリーン・ルームで作られたハイテク製品であるけれど、ブーレーズってそんなに練習をしないらしいのだよなあ。録音もどちらかと云うと無造作にやるらしい。どうなっているんだろう。ブーレーズというと昔はコンクリート打ちっ放しみたいな演奏スタイルで、それはそれでおもしろかったのだが、この溢れんばかりの色彩感への変容は、まるで絵画におけるルドンのようだ。伝説的な、異常なまでの耳の鋭さは変わらないのだが。
早寝。