『原民喜全詩集』/吉田修一『悪人』

雨。昼晴。夜雨。
音楽を聴く。■バッハ:ハープシコード協奏曲第一番BWV1052(ピノック)。

バッハ:チェンバロ協奏曲全集

バッハ:チェンバロ協奏曲全集

モーツァルト交響曲第四十番K.550(マッケラス、参照)。今ひとつピンとこない。■ショパン:幻想曲op.49、舟歌op.60、子守唄op.57(ルービンシュタイン参照)。やはりいいな。

岩波文庫版『原民喜全詩集』読了。原民喜は『夏の花』の著者に留まらない。これは岩波文庫で出すにふさわしい本だろう。一度読み切り、再読する。とてもいいものだという感想は変わらない。原民喜は詩集を纏めたのち自殺するが、絶望とか苦悩とかで死んだのではないような気がする。妻のところへ帰っていっただけなのではないか。確かよくできた全集が出ていて、開高健がそれをもってアリューシャン列島かどこかで釣りをしていたような記憶があるが。なお、若松英輔の文庫解説もいいもの。
原民喜全詩集 (岩波文庫)

原民喜全詩集 (岩波文庫)

ニーチェを読む。
吉田修一『悪人』読了。祐一と光代が逃亡しだしてからは一気に引き込まれていったが、ラストは本当にあれでいいのか。確かにあれこそが祐一の愛の証明なのだろうし、これしかないような気もするが、釈然としないものも感じる。何だか嫌な後味で、本書を読んでよかったのかどうか。本書は、人が言うほど自分は感銘を受けなかった。本書でいちばん魅力的な登場人物は光代だろうが、彼女に対する最後の扱いがひどすぎると思う。それから、房枝のエピソードも、全体から遊離している。最終的に、祐一は光代を救うために、ここで本当に「悪人」になったのだと思う。もうここには、光代の愛した、不器用な祐一はいない。その後の祐一に興味はもてないし、たぶん死刑になるということなのだろう。結局、作者の描いた図は何だったのか。
悪人(上) (朝日文庫)

悪人(上) (朝日文庫)

悪人(下) (朝日文庫)

悪人(下) (朝日文庫)