日曜日。晴。
音楽を聴く。■ラフマニノフ:パガニーニの主題による狂詩曲op.43(ヴァレンティーナ・リシッツァ、マイケル・フランシス、参照)。リシッツァ上手いな。■■ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第二十八番op.101(リヒテル、参照)。ピアノの音が何とも美しい。
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イアン・ハッキング『表現と介入』読了。先日読みかけで多少の感想を書いておいたが、読了しても至極おもしろい本だという感じは変らなかった。先日は「表現(科学理論)」の部分しか読んでおらず、ここでは非常に頭のよい学者だなという印象が強かった。著者の対象は自分には「科学史・史」の分野だと思われ、そこでの(東浩紀氏ではないが)メタ・ポジションを取り合うゲームの強者という感じ。頭の切れるところとバランス感覚の両方をもっていて、何でもメタ位置から解釈することにほぼ成功していると思う。
しかしそれだけではない。「介入(科学実験)」の部分がそれ以上に刺激的だ。というか、ちょっと参りましたと脱帽である。科学実験の歴史の細部に関し、僕はとても著者のレヴェルに達していないことを認めざるを得ない。でもまあ、これまでの科学哲学者でも、彼ほど実験に関し正確な知識をもっている者はいなかったと思われるので、自分などでは仕方のないことであろう。顕微鏡の理論だとか、マイケルソン=モーレーの実験の(予想外の)真実だとか、驚かされる。それにしても、「実験は成功しない」というのは、その通りなのだよね。大学で理系の勉強をすると、まずつまらない実験をさせられるのだが、やった人はわかると思うけれど、これがなかなか上手くいかないものなのだ。そりゃ学部学生くらいでは仕方がないでしょうと云われるかも知れないが、そうではないのである。プロの実験家でも、上手くいかないものなのである。実験というのは上手くいかないからこそ、(当り前だが)優秀な実験家がノーベル賞を貰ったりすることがあるわけだ。著者は本当にびっくりするくらい実験のことをわかっている(それで、例の「理論負荷性」という概念を粉砕してる)。それだけでも、いやそれこそが、本書の卓越し、また恐らくは、影響を与えたところなのであろう。科学哲学に興味のある方は、是非読まれるといいと思う。
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