スウィフト『召使心得 他四篇』

晴。
すごく変った夢を見た。描写しかねるが、とにかく大友克洋の「AKIRA」の世界のような、階層的な廃墟というか何なのかの中を、どんどん歩いていく感じ。何のためかはわからない。もう殆ど忘れているが。あと、キッチュな和風旅館の中みたいなのも覚えている。思い出したいなあ。とにかく、現実でも夢でも、過去に一度も見たことがない光景だった。
音楽を聴く。■モーツァルト:セレナーデ変ホ長調K.375(ホリガー木管アンサンブル)。上手い。■モーツァルト:ピアノ・ソナタ協奏曲第九番K.271、ロンドK.386、コンサート・アリアK.505、ハイドン:ピアノ協奏曲ニ長調Hob.XVIII :11(アレクサンドル・タロー、ベルナール・ラバディ、ジョイス・ディドナート)。タローは聴くべきピアニストだと思うが、評するのはむずかしい。現代を引き受けている演奏家ではあろう。たぶん勉強家でもあると勝手に思っているのだが、現代における未成熟というか、未消化の問題がある。なかなか取り入れたものを消化しきれないのだ。ここでは、K.271はモーツァルトの感じがしない。むしろ、ハイドンの方が、多少せわしないところはあるが安心して聴ける。これはベートーヴェンモーツァルトのピアノ協奏曲にも引けを取らない、いい曲でもあるし。とにかく全体的に、現代を生きている感覚はある。ラバディの指揮は、小気味よいとも云えるし、せわしないとも云えるだろう。

Mozart/Haydn: Piano Concerto N

Mozart/Haydn: Piano Concerto N


ウラの樹を伐らせたのがわかった。近所のアパートの住人が、虫がわくとか言って県に伐らせたのだ。欅や夏蜜柑の樹に何がわくか知らないが、自分の土地でもないのにバカらしいことである。対応が面倒だから伐ってしまう県も県だが。樹も生き物だという感覚がまったくないのだな。
 それとはまったく関係ないけれど、田舎の生活と最新のテクノロジーは、必ずしも背反し合うとは限らないのではないか。両者を繋いでいく線がまだあまりにも未開拓なだけだと思う。可能性はあるのではないかという気がする。

ジョナサン・スウィフト『召使心得 他四篇』読了。原田範行編訳。スウィフトは英文学において文体で名高いが、本書は日本語訳としても立派だ。日本語でも、スウィフトに関してこれほど自然な訳文が可能だとは。スウィフトは正気において殆ど狂人であり、のちに実際に狂気に沈んだ点、僕は画家のゴヤを思い出すが、その風刺の苛烈さ、人間に対する絶望の点でもよく似ていると思う。本訳書は、そのエッセンスが凝縮されていると言っていいだろう。スウィフトを読んだことがない方は、本書で興味をもたれたら是非『ガリヴァー旅行記』もお薦めする。これは子供向きの本ではない(特に第三部と第四部)。訳者には、このような手にしやすいエディションで、続編が期待されるところである。
召使心得 他四篇 (平凡社ライブラリー)

召使心得 他四篇 (平凡社ライブラリー)


日本もついにややこしいことになってしまった。よく考えてみたが、自分には身代金を支払うのか拒絶するのか、どちらかを選ぶことは不可能だとわかった。国家が国民の命を守るのは当然である一方、よく云われる「テロに屈することはできない」というのもまた「正しい」のであろう。どちらを選んでも地獄である。自分としては、そのような選択が迫られる以前の牧歌的状況が、幸運だったと思わざるを得ない。懸念されるのは、これで日本人の間に、反イスラムの感情が住み着いてしまうことである。今回の事件は、イスラム教(および教徒)とは関係がないと思うべきである。これは普通のイスラム教徒の支持するところではない。また、日本(人)の右傾化はさらに進むであろう。首相を批判することに対し、「非国民」とすら云われるようになる恐れがある。それにしても、安部首相は火薬庫の中へ出向いて行って、不用意な発言をしてしまった。それはもう取り返しがつかない。いずれにせよ、今回の事件で国が身代金を払おうが払うまいが、自分があとで何も言えないことははっきりしている。困ったことだ。ただ、日本で日常的に「テロ」が起きることになるような事態は、避けたいとは思う。しかし予想されるのは、こういう葛藤の中で、人は次第にアパシー状態に陥っていくのではないか。これが二十一世紀だとは。
 しかし、判断しようにも、自分はあまりにも何も知らない。いったい、「イスラム国」というのは、何なのか。「テロ」をやっているとされるアルカイダ系云々も、何なのか。何が目的なのか。誰が資金を出し、誰が武器を供給しているのか。資金に関しては、「イスラム国」は身代金で相当の額を得ているようであるから(フランスなどは身代金を払っているらしい)、日本もその標的になったわけだろう。自分は本当に無知である。しかし、テレビの「事情通」などはいったい何を知っているのだろう。見ていても聞いていても、肝心なことはさっぱりわからない。それを取材してくれる筈のジャーナリストも、今回捕まってしまったわけだし。(AM0:11)