福田歓一『近代民主主義とその展望』/川上弘美『ざらざら』

明け方、台風通過。晴。
一〇時間くらい寝た。
音楽を聴く。■モーツァルト:ピアノ協奏曲第二十七番K.595(ゼルキンアバド参照)。■バッハ:イギリス組曲第五番BWV810(ルセ、参照)。新鮮。■ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第五番op.10-1(アラウ)。
畑のヌートリア対策。放っておくと、ホウレンソウなどが食べられてしまう。

福田歓一『近代民主主義とその展望』読了。民主主義について、コンパクトでとてもよく纏まった本。教えられるところが極めて多かった。近代において民主主義というのは元々左翼的な意味で使われていたのだが、そのうちナチススターリン体制下のソ連でも使われるようになったいうのは、それは確かにそのとおりだな。近代民主主義を確立したのは、米英のアングロ・サクソンだということ(もちろんフランス革命も大きかったが、ここはなかなか複雑)。また、武力を用いる代わりに多数者に権力を与える政治形態だということ。だから、民主主義というのは、多数者が少数者をどう扱うかで決ってくる。多数者が少数者を蹂躙しては、だから悪しき制度になる。いずれにせよ、民主主義は影に必ず暴力装置の存在がある。ただ、著者が最終的に結論するのは、人間の尊厳と両立するのは、民主主義しかないということである。
 以上、当り前といえばすべて当り前のことであるが、太い道筋を示してあるのはありがたい。というのは、現代にあっては、民主主義というのがどこへやらに行ってしまっていることが少なくないからである。民主主義は当り前すぎて、わからなくなっているというか。本書のような古い本が、今でも読むに値する所以である。

近代民主主義とその展望 (岩波新書 黄版1)

近代民主主義とその展望 (岩波新書 黄版1)

川上弘美『ざらざら』読了。短編というか、殆ど掌編というくらい短い小説が、二十三篇収められている。僕は連作短編集が好きなのだが、これは残念ながらそうではなかった。恋愛掌編が多くて、川上さんの小説にしては普通で、ちょっと退屈かなと思って読んでいたのだが、途中中断して読み出したら、えらくおもしろかった。やはり繊細で、いい小説を書かれる。そう思った。川上さんの小説は、何というか、「現代日本の不思議」という感じが僕にはあって、それは深いものだと思う。自分は西洋かぶれだが、いまの普通の日本人は、こうした繊細さの中で生きているのかなと思う。もっとも、それで却って疲れることもあるだろうし、そういうところも川上さんの小説には欠けていないだろう。まあ、ふつうの人がふつうに読んで、ふつうにおもしろい小説集だと思います。
ざらざら (新潮文庫)

ざらざら (新潮文庫)


きゃりーぱみゅぱみゅを聴く。
まさしく僕のためのポピュラー音楽ではないか。ちょっと期待しすぎたところはあったが、「トーキョーハイウェイ」とか、感涙ものである(しかし、きゃりーぱみゅぱみゅを聴いても、俺って Romantiker だな…)。「すんごいオーラ」「エクスプローラー」なんかも、よく知らないが、これが日本のポピュラー音楽の水準ならなかなかではないか。まったく cute! 浅田彰さんならどう聴くか、ちょっと聞いてみたい気がする(というのも歳がわかるな…)。いやあ、楽しかった。田中ヤスタカ、なかなかやるな。