柄谷行人『帝国の構造』/佐藤文隆『対称性と保存則』

晴。
音楽を聴く。■モーツァルト交響曲第二十四番K.182(ベーム参照)。

柄谷行人『帝国の構造』読了。副題「中心・周辺・亜周辺」。近年の柄谷の著作の中では、個人的にはもっとも面白かった。このところの著作の延長線上にあり、独自の四つの交換様式の考察を土台に、世界史を書き換える試みの続きである。その価値の判断は自分の能力を超えているとしか云いようがなく、ただ、柄谷の実力が高度に発揮されていて圧倒された。世界史の話が多く(中国やモンゴル帝国の話が多いのは新鮮)、個人的にはそこがいちばん面白かったが、後半部では現代的な話もあり、特に日本史を取り上げている章もあって、日本史の捉え方はとても斬新なものであった。本書の重要語のひとつは、帝国の「亜周辺」というものであり、具体的には、ローマ帝国の亜周辺である西ヨーロッパと、中華帝国の亜周辺である日本などが考察されている。また、ウォーラーステインよりはブローデルに基いていると云えるだろう(例えば「世界=経済」の概念)。
 ところで、ここを取り上げるのはミスリーディングになるかも知れないが、後半部にはこのままでの将来の戦争の不可避性を主張しているところがある。それに対処するため、カントの『永遠平和のために』を読み込んで国連主義を唱導し、日本の憲法第九条を擁護するところは、これまでの仕事と変らない。また、本書では四つの交換様式が主軸になるにも拘らず、柄谷独自の交換様式Dの話題が少なく、またそれを基本的に普遍宗教として考えており、本書には「アソシエーション」の語はひとつもないことを指摘しておこう。

帝国の構造: 中心・周辺・亜周辺

帝国の構造: 中心・周辺・亜周辺

佐藤文隆『対称性と保存則』にざっと目を通す。アマゾンの中古で買ったので再読。記述が圧縮されているので、そのうち丁寧に読まないとな。
岩波講座 物理の世界 力学〈2〉対称性と保存則

岩波講座 物理の世界 力学〈2〉対称性と保存則