晴。早起き。
音楽を聴く。■モーツァルト:ピアノ協奏曲第二十五番K.503(アルゲリッチ、アバド2013Live)。アバドの最後の録音らしい。アルゲリッチのピアノは、技術的には衰えてきているのかも知れないが、生命感に満ち溢れている。アバドは相変わらず、協奏曲での理想的なパートナーぶりを示している。色々話題になりそうな録音だが、とにかく演奏が見事なのでよかったと思う。
- アーティスト: W.A. Mozart
- 出版社/メーカー: Deutsche Grammophon
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宮下誠『20世紀音楽』読了。著者は音楽の専門家ではない。それは別に悪いわけではなくて、だから本書は音楽史や音楽評論を述べたものではない。また正直言って、それほど文章が上手いわけではなく、音楽を上手に紹介しているものでもない。読んでいて、音楽が立ち上がってくるような部分はまずなく、だからそれほど音楽が聴きたくなってくるわけではないのだ。著者の言う「20世紀音楽」というのは、いわゆる「現代音楽」のことだけではない。むしろ、著者も述べているように、音楽語法的に斬新でない、つまりは調性を放棄していない音楽もたくさん紹介されている。これは必ずしもデメリットではなく、めずらしい作曲家や曲の紹介もあって、そこいらは参考になった。ただ、自分が個人的に好きな、室内楽やピアノ曲の紹介は極めて少なく、相対的に(自分の聴かない)オペラの比重が大きくて、その辺も個人的には残念と云えば残念である。評語も、自分の納得できないものが少なくなかった。ただ、普通のクラシック音楽好きが手にとるような本で、20世紀音楽を扱ったものは殆どないので、そういう意味では貴重な書物である。まあ、よくこれだけ聴いたものだとは思った。自分ももっと聴こうという気にはさせられる。決して存在価値のない本ではないことは、付言しておこう。
- 作者: 宮下誠
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2006/09/15
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- 作者: パヴェーゼ,河島英昭
- 出版社/メーカー: 岩波書店
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今さら集団的自衛権の問題を云々しようとは思わないが、世界各国の反応を見ていると、基本的に「日本は平和国家であることを止めた」という論調なのは興味深い。さすがによくわかっていると思う。中東などにおいても、平和国家としての日本というのはよく知られていて(だから中村さんのペシャワール会の活動のようなこともあり得た)、これは外交上の日本の大きなカードだった。それは、日本人としてタリバンの武装解除などにも携わり、戦場で多くの人間を殺してきたような男たちと渡り合ってきた、平和構築学の伊勢崎さんも強調していたところである。しかし日本政府はそのことに鈍感だったし、持っていた大きな信用、リスペクトを溝に捨てるようなことをしたと思う。これまで日本人をターゲットから外してきた「テロリスト」たちも、場合によってはこれから日本人を特別扱いしなくなる可能性も、大いにある。少なくとも日本は、平和によって国益を追求する国から、戦争によって国益を追求する国になった。安倍首相のしたかったことは結局それだと思うが、自分の見立てでは、今回の安倍首相の政治で、日本は大きく国益をそこなった可能性も否定できないと思う。もう遅いが。
ついでだから書いておくか。今回の集団的自衛権についてだが、安倍首相は嘘をついていると思う。具体例としてはシーレーンにおける機雷除去だとか、あまり意味のないことばかりが言われているが、本音は一言も言っていない、対中国だろう。しかし、これは恐ろしい選択をしたものだ。中国に武力で対抗しようとは。仮に戦争になった場合、世界でも有数の大国どうしが戦うのであるから、悲惨なことになるのは目に見えている。その時、アメリカが全力で日本を支援してくれるかと云えば、それは甘い見通しだと思う。支援しないとは云わないが、それはそれがアメリカの国益になると判断せられた場合だけである。そして日本は核兵器を持たないから、日本の全面的な勝利というのはあり得ない。むしろ、外交政策によって絶対に中国と開戦にならないよう、全知を絞るしかない。この点から見ても、戦争で国益を追求するやり方は、平和で以てやる仕方より、賢明だとは云えないと思うのだ。これは自分の憶測だが、これで中国はむしろ腹が決まり、喜んでいるのではないだろうか。これでは中国の土俵に乗ったことになると思う。
とにかく、日本は中国やアングロ・サクソンと同じパースペクティブでものを考えては絶対にいけない。それは日本の苦手分野なのだ。しかし、日本は自ら不利な立場に至ろうとしているように見える…。