山本義隆『世界の見方の転換1』

雨。
山本義隆『世界の見方の転換1』読了。前著『一六世紀文化革命』を補完する。第1巻の副題は「天文学の復興と天地学の提唱」。各章の題は以下のとおり。「古代世界像の到達地平」「地理学・天文学占星術」「数学的科学と観測天文学の復興」「プトレマイオス地理学の更新」。ギリシアの古代天文学、具体的にはプトレマイオスの復興は、中世以降「占星術のための天文学」のために役立てられる。その際に、一方の古代の知見の盲目的崇拝に対して、もう一方では現実の天文学のデータの蓄積と精緻化が生じ、次第に古代の知識が反駁されていくことになる。その流れは、印刷技術の登場によって強められ(啓蒙的な著作の重要性)、古代の知識をもちつつ、新しい「実学」に対応できるレギオモンタヌスのような学者が現れてくることになる。これこそが近代科学の濫觴なのであった。古代の知識は、新大陸の発見などの地理学上の新知見により、ますます疑われるようになり、そこからの開放が行われることになる。――だいたい、本書はこんな感じだろうか。一次資料の読み込みが凄い。日本に居つつ、ここまでやることが可能であるとは。以下次巻。


音楽を聴く。■シューマン:交響的練習曲op.13(リヒテル1956Live、参照)。鳥肌が立つような演奏だが、何ということだ、第八、第九、第一〇変奏が省略されているではないか! ショック。聴いていて突然第一一変奏に飛んだので、吃驚した。あと、終曲にリヒテルとは信じられないような大きなミスがあるのも残念。なかなか上手くいかないなあ。■サン=サーンスピアノ三重奏曲第一番op.18(フロレスタン・トリオ)。佳曲佳演。
Piano Trios Nos 1&2

Piano Trios Nos 1&2