川北稔『イギリス 繁栄のあとさき』

晴。
仕事の成果が出たようで、よかったです。とりあえずホッとした。
音楽を聴く。■ハイドン弦楽四重奏曲第三十八番「冗談」(ロンドン・ハイドンQ)。ピリオド楽器による演奏。えらく生々しい音である。

String Quartets Op.33

String Quartets Op.33


川北稔『イギリス 繁栄のあとさき』読了。著者は気楽に書いたエッセイ集だというが、自分はかなり硬い本だと思った。別にそれに終始するわけではないが、ウォーラーステインの訳者らしい記述は、至る所に見られる。「イギリスは成功したから帝国になったのではなく、帝国になったから成功した」(p.35)などという標語などは、いかにも面白い。また、産業革命は本当に存在したかどうかはむずかしいところで、イギリス経済の拠り所が工業であったことはなく、地主や地代・金利生活者がイギリスの繁栄の担い手だったというのも、著者らしい意見である。恐らくそれは正しいのであろう。
 著者によると、「イギリスの衰退」という言い方も、よほど気をつけねばならないらしい。確かにイギリスはヘゲモニー国家ではなくなったが、生活水準が落ちたということもなく、相対的には低いかもしれないが、成長は続いているというのである。そして、日本も、その「衰退ぶり」の「粘り腰」に学ぶところはないのか、と著者は述べている。まあ、自分も日本の「衰退」は確かに気になるが、それは第一に考えるべきことではないように、最近では思っている。経済面の「衰退」以上に、考えるべきことはあるだろうとも思う。というか、そうした態度が少ないところが、今の日本の問題なのではないか。
イギリス 繁栄のあとさき (講談社学術文庫)

イギリス 繁栄のあとさき (講談社学術文庫)


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