黒島伝治作品集『瀬戸内海のスケッチ』

晴。
音楽を聴く。■シューマン:幻想小曲集op.12(デムス)。さすがにデムスでは苦しいが、最低限のことはやっている。■ヘンツェ:交響曲第二番(ヘンツェ)。面白い。■シューマン交響曲第三番op.97「ライン」(バーンスタインNYPO1960)。素晴らしい演奏。というか、たぶん自分だけかも知れない。第一楽章が超絶的に素晴らしいのであるが、その理由が上手く言えない。個人的にはこの曲は、第一楽章と終楽章が聴きたいのである。そのツボに嵌ったのだろうな。第四楽章、終楽章は曲の魅力を充分に引き出している。一方、第二楽章はちょっとテンポが速すぎ。それにしても、自分と若い頃のバーンスタインが、こんなに相性がいいとは。我ながら意外だ。その音楽は、スケールが大きくて、すごく切れ味がいいのである。何というヤンキー、バーンスタイン!■ブラームス:バラードop.118-3、ラプソディop.119-4、間奏曲op.116-5、カプリッチョop.76-8(リヒテル)。

Richter The Master Vol.7: Brahms & Schumann

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黒島伝治作品集『瀬戸内海のスケッチ』読了。山本善行選。黒島伝治という作家は初めて読む。選者の解説に拠れば、彼の作品は「農民もの」と「シベリアもの」に大別されるそうだが、このアンソロジーでは、主にその「農民もの」から選ばれている。確かに云われるとおり、文章はよく、そして、今では失われた類の射程があるようだ。少なくとも自分にはないところがあって、読んでいて途中で休憩が必要だったくらいである。中でも特に「田園挽歌」がよかったし、その他の「農民もの」も、田舎とは確かにこういうものだと納得させるところがある。そこは、必ずしも住みやすい世界ではないし、村の人間というものは、癖のある人物が殆どだ。もちろん現在ではそうした空間はほぼ失われたと云っていいが、自分はわずかにまだその世界の感覚がわかるような気がする。田舎の人というのは、なかなか都会の人が思っているほど、善良でも素朴でもないのだ。黒島伝治のこの作品集を読んで、そんなことを思った次第である。
 それにしても、本書は奇特なアンソロジーだ。下衆の勘ぐりで、これで商売として成り立つのかと心配するくらい、いいものだと思う。黒島伝治の作品は岩波文庫にも入っているそうだが、果して入手可能なのだろうか。
瀬戸内海のスケッチ―黒島伝治作品集

瀬戸内海のスケッチ―黒島伝治作品集