南川高志『ローマ五賢帝』/玄侑宗久、鈴木秀子『仏教・キリスト教 死に方・生き方』

晴。
音楽を聴く。■ハイドン:ピアノ協奏曲第十一番ニ長調ミケランジェリ)。

ハイドン:ピアノ協奏曲 二長調、ト長調

ハイドン:ピアノ協奏曲 二長調、ト長調

シューマン交響曲第二番ハ長調op.61(チェリビダッケ)。

南川高志『ローマ五賢帝』読了。元本は新書。著者は、ローマの五賢帝時代を扱った邦文書は意外に少ないと述べているが、確かにそうである。「衰亡史」は、ギボン以来現在に至るまで、多いのであるが(著者自身の「衰亡史」が、岩波新書に入っている)。本書は、そうした五賢帝時代を語る、読み応えのある啓蒙書である。著者自身の研究も取り入れられ、ハドリアヌス帝の皇帝継承の謎については、かなり専門的な言及がある。通説を覆しているところも多いし、読み物としても精彩のある筆だと思う。西洋史が好きな人はどうぞ。玄侑宗久と鈴木秀子の対談集『仏教・キリスト教 死に方・生き方』読了。新書で軽い外見だが、宗教と生・死を語って感動的な内容になった。玄侑宗久師は以前からの自分の贔屓であるが、鈴木秀子氏も凄い。器の大きさでは、ひょっとすると玄侑師を凌ぐくらいかも知れない。共に多くの人の死に向き合ってこられた人たちで、日本の仏教、キリスト教の最良の部分が、易しいが深い言葉で(というのも陳腐だが、自分にはこうしか云えない)、お互いを明らめ合っている。もしかすると、変に知力を付けると、こういうものはわからなくなってしまうかも知れない。かかる言葉たちこそ、真に我々を深く考えさせるのだが。いや、こんな言い方では本書の価値は伝わらないような気もする。とにかく万人に薦められる本(というのはまずないのだが)なので、生死というのに疑問を持ったら、是非読んでみて下さい。もしかしたら、大切なことがわかるかも知れません。
 例えば、ICUで一〇日間命を伸ばして機械の中で死ぬより、それが一日に縮まっても、家族と最後を共有したい、人の死はそうあるべきだと、本書を読んで自分はそう思いました。そういうことは、なかなかむずかしいのだろうか。
仏教・キリスト教 死に方・生き方 (講談社+α新書)

仏教・キリスト教 死に方・生き方 (講談社+α新書)


音楽を聴く。■ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第三番ニ短調op.108(デュメイ、ピリス)。まずまず。終楽章はちょっと弱い。