速水健朗『1995年』/竹内薫『不完全性定理とはなにか』

晴。
音楽を聴く。■シューマン:謝肉祭op.9(内田光子)。申し分のない立派な演奏。この曲の鋭角的なところも瞑想的なところも、充分に表現している。ただ、内田光子独特の粘り気のあるタッチは、あまりシューマンに相応しいとは云えない。ミケランジェリのような乾いたタッチが、この曲には合っているような気がする。

シューマン:クライスレリアーナ 謝肉祭

シューマン:クライスレリアーナ 謝肉祭


速水健朗『1995年』読了。まあまあ面白かった。自分に引きつけて読んだわけだが、この年は自分は二〇代後半だった。二〇代の始めは、同時代的なものにほぼ完全に目を背けていたが、その頃は少しづつ(いや、急速に、か)時代を意識するようになっていた。この年の阪神淡路大震災地下鉄サリン事件は、もちろんよく覚えている。インターネットの普及は、まず大学で感じた。ちなみに、その頃から普及しだしたケータイは、自分は今でも持っていない。さて、その頃は何を考えていたのか。ここに書くほどのことでもないだろうな。付け加えておけば、今のように日本が凋落していることは、まだなかった。日本人の劣化も、その徴候がようやくはっきりしだしたあたりではなかったか。やはり、それから二十年で、日本の雰囲気が確実に暗くなったことは確かだろう。ただし、若い人はどの時代でも楽観的なのである。それが若さだと思う。
1995年 (ちくま新書)

1995年 (ちくま新書)

竹内薫不完全性定理とはなにか』読了。副題「ゲーデルチューリングの考えたこと」にあるように、不完全性定理ゲーデルによる証明だけでなく、チューリング・マシンの停止に関する問題が、不完全性定理と同等であることを解説した本である。僕はサイエンス作家・竹内薫さんが好きなので、本書は楽しく読んだ。竹内さんは謙遜されるが、とても優秀な方である上に、自分の理解したことをきちんとわかりやすく書く能力があるので(これは当り前のことではないのだな)、本書もいい本になっている。本書は、専門家になろうという人向けではないとされているが、若い人がこれに刺激を受けて、専門家になるということだってあり得ると思う。中身はきちんとしているし、本書の足りない点(精密に書くと一般書の範囲を超えてしまう)まできちんと本文で指摘されているのだ。一般人の理解は、本書程度で充分だと思う(自分もこのレヴェルであります)。竹内さん自身が個性的な文章家なので、その芸も楽しみのうちです。ゲーデルに興味がある人は、是非どうぞ。
買いました。今は外付けHDも安いなあ。